2012-01-01から1年間の記事一覧

ふしめ

ウィキペディアの、「ポータル文学」の欄には、その日付に縁のある人びとの生誕や死没の記述があります。 12月の末というと、石川淳や中村真一郎、横光利一などの人が亡くなっています。戦後まもなくの横光はともかく、石川淳が亡くなってもう25年になるかと…

知っているべきだった

年末なので、いろいろと古紙類を整理していたら、平石耕一さんの演出した『風車の見える丘』(旭爪あかね原作)の公演パンフが出てきました。 そこで、平石さんは風力発電を推進しているところを取材にいったようで、そこの自治体が出している案内チラシも一…

妹の力

といっても、柳田国男ではありません。 小路田泰直さんの『邪馬台国と「鉄の道」』(洋泉社歴史新書、2011年)です。 なぜ奈良盆地南部に「都」がおかれたのかと、著者は考えます。そこが列島の中心にあたる土地であることを、交通路の論証などを通じてあき…

表と裏

大浦ふみ子さんの『原潜記者』(光陽出版社)です。 表題作と、「介護士」という書き下ろし作品との2作が収録されています。一つは放送局のはなし、もう一つは民間介護施設ではたらく青年労働者のはなしです。 放送局の話は、1960年代から21世紀初頭にかけて…

固定化

鈴木翔さんの『教室内(スクール)カースト』(光文社新書)です。 学校のこどもたちの集団に生じている〈上下関係〉に関して、1984年生まれの著者が、生徒や教師にインタビューをしながら、その内容を分析しました。もともとは修士論文だったものを、増補し…

先祖がえり

韓国の大統領も、『親の娘』になったそうです。はさんでいる両国も、『祖父の孫』が権力をとるのですから、3か国は似たものどうしということで、けっこう仲良くできるのかもしれません。とくに、日本の祖父のかたは、韓国の父のかたと、常に密着して、政権の…

数え直す

小選挙区制がほんとうに民意を反映しているのかとは、よくいわれますが、今回の結果を、ドイツ流の併用制(ブロックごとに比例で獲得議席を決め、小選挙区での当選者が多ければ超過議席としてカウントする)にしてみると、こうなります。 自民237(比例142+…

無事これ名馬

村上春樹さんの『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』(文藝春秋、2010年)です。 村上さんのインタビューを、国内外問わずに集めたものです。ですから、小説を書くに至った神宮球場のエピソードとか、ほかにも小説の書き方など、重複しているものもある…

抜けている

小野俊太郎さんの『明治百年』(青草出版)です。 1968年のあれこれをさぐったもので、小熊英二さんの『1968』から抜け落ちた当時の生活のさまざまなスタイルを考えようとしています。それは、いまに続く社会のシステムが構築され始めた時期だというので…

訳語

聞いた話で、確かめていないのですが、今回空を飛んだ物体のことを、英語では『サテライト』と呼んでいるそうです。 それを聞いたとき、堀田善衛の「広場の孤独」のなかで、外電の〈タスク・フォース〉を訳すときに、〈敵機動部隊〉とことばを発した管理職に…

それにしても

井上宗和さんの『新版 日本の城』(現代教養文庫、1976年)です。 日本の現存するばかりか、石垣くらいしか残っていないものも含めて、白黒ですが写真版で紹介しています。空襲で焼かれた天守閣も多いのですが、全国いろいろなところで、復興や模擬のかたち…

広がり

コレクション戦争と文学(集英社)のなかの、『帝国日本と朝鮮・樺太』です。 朝鮮にやってきた人たち、育った人たちの作品を、植民地時代に発表されたものも含めて、広くあつめています。樺太では、先住民族を登場させた作品もありますし、今月出たばかりの…

シンプル

『石垣りん詩集』(ハルキ文庫、1998年)です。 石垣さんの詩は、表現が適切なものが多いようです。「表札」という詩など、その典型ではないかとも考えてしまいます。 詩に限らず、ことの本質をすっきりと表現できればいいなと思います。

まぎれこみ

『日本列島 石器時代史への挑戦』(安蒜政雄・勅使河原彰、新日本出版社、2011年)です。 旧石器時代を安蒜さん、縄文時代を勅使河原さんが執筆しています。 いくつかのおもしろいこともあるのですが、縄文農耕の可能性を論じたところで、遺跡からでる植物の…

命の値段

村上龍さんの『心はあなたのもとに』(文藝春秋、2011年)です。 金融ファンドで財をなした50歳くらいの男性が知り合った、30歳ほどの離婚歴ありの女性が、1型糖尿病の患者で、常に健康不安に脅かされているということがわかります。そこで男は、女性の生活…

気質

岩波現代文庫の『橋川文三コレクション』(2011年、文庫版オリジナル編集)を読んでいたのですが、どうもはだが合わないようです。 きょうはここまで。

その前夜

『戦場のエロイカ・シンフォニー』(ドナルド・キーン、小池政行著、藤原書店、2011年)です。 お二方の対談というか、キーンさんへのインタビューというか、戦時中のキーンさんの体験を軸にして、いまの日本につながる話をしています。対話自体は2010年にお…

冷静さ

日本思想大系の『水戸学』(1973年)です。 会沢正志斎の「新論」だとか、藤田東湖の「弘道館記述義」とか、いわゆる尊王思想の権化ともおもわれる水戸の学問なのですが、それでもこれだけまとまって収録されていると、思想の変化もみられます。とくに、会沢…

遅ればせながら

外間守善さんが亡くなられたそうです。 「おもろさうし」の校訂など、沖縄の文学を身近なものにしてくださったという業績は、得がたいものがあったように思います。 読みにくいものを読めるようにして、普及することをおろそかにしてはいけません。日本文学…

縛り

岡田宜紀さんの『司馬遷の妻』(民主文学館)です。 岡田さんは京都で長く教員をやっていたそうで、学校を舞台にした作品も多いようです。 けれども、この短編集で印象に残るのは、京都郊外の岩倉に残っていた乳きょうだいの風習にかかわった、「乳兄妹」で…

地中から

岸俊男『宮都と木簡』(吉川弘文館、1977年)です。 著者の小論考を集めたものですが、1960年代からの開発の中で、遺跡をどう考えていくかという視点が、大きく貫かれています。 いまでこそ、平城宮址は史跡として扱われているのですが、そこも、国道のバイ…

同い年

四方田犬彦さんの『李香蘭と原節子』(岩波現代文庫、2011年、親本は2000年)です。 戦前からの映画界で活躍した同年(1920年生まれ)の二人に焦点をあてて、当時の映画事情を考えています。 西洋に対してある種の劣等感を抱いていた日本が、東アジアに対し…

パートナー

山中光一さんの『ある現代史』、秋元有子さんの『ときにありて』(いずれも本の泉社)です。 山中さんの本は時代を大きく眺めながら、その中でのおのれの生き方をとらえるものになっています。 秋元さんは、小説じたてで、みずからが国会議員として活動して…

多様な論議

明治文学全集(筑摩書房)の『山路愛山集』(1965年)です。 愛山は一時期は社会主義に接近しましたが、平民社には反対し、国家社会主義と自称するようになるのですが、そこにいたるまでの過程にはけっこうおもしろいものがあるようです。 ここに収録された…

モデル

河上肇『祖国を顧みて』(岩波文庫、2002年、親本は1915年)です。 河上は留学のために1913年から渡欧し、第一次大戦がはじまったときドイツにいて、ぎりぎりのところでドイツを脱出するという経験をしています。 交戦国になる瞬間の記録であるとか、開戦時…

変えるために

『コレクション戦争と文学』(集英社)の、〈オキュパイドジャパン〉の巻です。 占領下のさまざまな事象が作品化されているのですが、読めば読むほど、これは沖縄の〈いま〉ではないかと思うような感じです。たまたま本土は〈独立〉をはたしたかっこうではあ…

飛び石作戦

きのうの『ためしてガッテン』で、プチ断食の話題が出ていたのですが、そのなかで、戦時中にアメリカで行われた実験の話がありました。 兵士に、一日二食(とはいえ1750キロカロリーだそうですが)にして、運動などは普通以上にやらせると、半年後には心臓の…

みんなそろって

今月の文芸4誌、みな丸谷才一の追悼文が載っています。池澤夏樹さんが大活躍。 ただ、一緒に歌仙を巻いていた大岡信さんの文章がどこにもありません。岡野弘彦さんが書いているところによれば、病気をされていて、文学活動どころではないような感じです。 丸…

客観的に

原武史さんの『団地の空間政治学』(NHKブックス)です。 この前、原さんの『レッドアローとスターハウス』について触れましたが、そこでは書かれていない、西武沿線以外での団地のありようを中心にしています。そのため、鉄道の話と言えば、常盤平団地がで…

都びと

高橋昌明さんの『清盛以前』(平凡社ライブラリー、2011年)です。 大河の清盛は視聴率が悪いとばかり評判だそうですが、なじみのない時代を描けばそうなるのはやむをえないのですから、それは覚悟の上だったのではないでしょうか。 それはそれとして、清盛…