2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

転機

2.26という日付でもありますから。 前回の続き的なところもあるのですが、横光利一が神戸港から船に乗って、ヨーロッパに出発したのは、1936年2月20日です。そして、門司、上海とこえて、2.26事件のことを知ったのは、上海を出た船が、香港へ向かう途中のこ…

機会

おうふう、から出た『横光利一 欧州との出会い』(2009年)です。 横光は1936年に渡欧し、ベルリンのオリンピックも観戦して帰国するのですが、そのときのメモが今回発見されたので、それを翻刻して、あとは関係する論考を書き下ろしてもらうという趣向です…

土台

大西広さんの『現場からの中国論』(大月書店、2009年)です。 収録された文章は、2008年に書かれたものが多いのですが、中国報道の一面化を戒め、きちんとした理解をうながすものになっています。 チベットやウイグルで起きていることは、民族の対立という…

清算的

和島芳男『中世の儒学』(吉川弘文館、1965年)です。 日本の漢文学の流れとして、菅原道真の時代、五山文学の時代、菅茶山の時代と、だいたい3つの時期をとるのが一般的だと思いますが、その中の、五山文学に相当する時期のことを研究したものです。けれど…

働きながら

刊行されたときに、少し書きましたが、『小林多喜二の手紙』(岩波文庫、2009年)です。 この前は、付録の充実についてふれたと思いますが、今回は少し内容ともかかわって。 ここにある手紙をみると、『蟹工船』を書いたときの多喜二は、銀行労働者だったと…

下準備

大日方純夫さんの『警察の社会史』(岩波新書、1993年)です。 おもに明治大正期の行政警察のありようを調べたものですが、社会生活のざまざまな局面に警察が関与していたことがわかります。そういえば、大相撲で現在はなくなりましたが、昔は親方がいなくな…

たたかい

笙野頼子さんの『海底八幡宮』(河出書房新社、2009年)です。 金毘羅になってからの笙野さんの作品は、すぐに読むという感じではなくなってきているので、今回も、本が出てからしばらくたっています。今回はヤマトに組み込まれてしまった神が登場して、主人…

正統性

『自立へ向かうアジア』(狭間直樹・長崎暢子、中公文庫世界の歴史27、2009年、親本は1999年)です。 第1次大戦から第2次大戦への期間の、中国とインドを扱っています。狭間さんが中国、長崎さんがインドの担当です。 大まかな流れや、文学作品などで、当時…

書きたいこと

佐川光晴さんの『牛を屠る』(解放出版社、2009年)です。 佐川さんは、最初の小説が新人賞をとったときには、「大宮市営と畜場」で働いていたのですが、その経験を書いた、回想記といえるものです。 実は、この本を買ったのは昨年の9月ごろだったのですが、…

リアルタイム

小林信彦さんの『黒澤明という時代』(文藝春秋、2009年)です。 小林さんは、「姿三四郎」を封切りで観たという、同時代の感覚を共有した方ですから、その面からの黒澤論となっています。小林さんの強みは、そうした同時代感覚にあるので、その点では、植木…

実際のところ

立松和平さんが亡くなりました。 彼の作品は、実はほとんど読んでないのですが、おもしろかったのは、与那国島にでかけて、サトウキビの収穫をしたときのルポ、『砂糖キビ畑のまれびと』(晩聲社、1985年)でした。のちに環境問題にいろいろと発言をする立松…

根は残る

小栗勉さんの『聳ゆるマスト』(かもがわ出版)です。 1980年代のはじめごろ、山岸一章さんが同じ題のルポを書きましたが、小栗さんのこの本は、小説ということで、細部には作者の想像力がはたらいているようです。 タイトルの由来は、1930年代初めに、呉の…

稲とライ麦

身もふたもないタイトルです。 映画の『稲の旋律』を観ることができました。 親の期待を背負って努力して、それがだめになってしまう主人公の姿が、よく出ている映画になっていると思います。 あの千華さんの両親のような人は、決して珍しくはないでしょう。…

暗さのなかに

ドリス・レッシング『一人の男と二人の女』(行方昭夫訳、福武文庫、1990年)です。 文庫編集の短編集で、1950年代から60年代の作品が中心です。タイトルはその中のひとつの作品のタイトルですが、ここに収録されたほかの作品も、同じような材料をあつかって…

ゆめのはて

室生犀星『哈爾濱詩集・大陸の琴』(講談社文芸文庫、2009年)です。 1937年5月、〈満洲国〉を訪れた犀星が、詩・小説・随筆と、いろいろな作品を残したものをまとめたものです。 小説『大陸の琴』は、大陸浪人みたいな人ばかり出てくる、わりあいむちゃくち…

売り物

昨日のNHK教育テレビの日本と韓国の関係の番組をみていたのですが、福沢諭吉が支援した金玉均のクーデターは失敗、それを契機に福沢は脱亜を唱えたという流れになっていました。そのとき、朝鮮では、開国によって穀物が輸出され、国内消費に影響を与え、それ…