2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

耐える

最上裕さんの『陸橋の向こう』(民主文学館)です。 最上さんは、電機の職場にいながら作品を書いてきたかたで、この作品集にも、そうした職場の現状が反映されています。 中心になるのは、〈陸橋〉ではじまる、表題作も含めた3つの作品で、〈東邦電機〉とい…

終わりははじまり

風見梢太郎さんの『再びの朝』(新日本出版社)です。 主人公はある通信会社の研究所に勤め、定年を迎えて再雇用ではたらいています。彼は京都の学生時代に日本共産党に入党し、職場のなかでも思想を理由にした差別待遇を受け続けてきました。けれども、かれ…

知るべきこと

岩波新書『在日朝鮮人』(水野直樹、文京洙)です。 在日社会の形成と現状を、歴史的にみて叙述したもので、この間の歴史認識問題についても、いろいろと知っておくべき点があるようです。 なにせ、敗戦を決定づけた文書も読まずに総理大臣がつとまる国です…

つくりごと

『近松浄瑠璃集 下』(日本古典文学大系、1959年)です。 近松の時代ものを収録しているのですが、江戸時代には、暗黙の規制として、同時代の政道をうんぬんしてはいけないというものがありました。だから、江戸は鎌倉だし、頼朝に畠山重忠や梶原景時が登場…

現地にて

原健一さんの『草の根の通信使 実録篇』(私家版)です。 原さんは、日本語教師として韓国に滞在した経験をもとにして、小説「草の根の通信使」「胸壁を越えて」を『民主文学』に連載しました。そのもとになった韓国滞在に関する記録や創作のための覚え書き…

親として

映画「ソロモンの偽証」です。原作は読んでないので、ご了解を。 1990年代初頭の冬、中学校の屋上から一人の男子生徒が落下した死体となって発見されます。その真相をめぐって、その生徒の同級生で、第一発見者でもあった女子生徒が、周囲の協力を得て翌年夏…