2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

背筋をのばす

柏朔司さんの、『風花の頃』(光陽出版社)が出ました。柏さんの、仙台での学生生活と、その後の教師生活、政治家としての活動の間のできごとを題材にした作品集です。〈高城〉なり〈榊〉なりと、作品によって主人公の姓は微妙に違いますが、なまえは「たくじ…

わかってもらえること

毎月やっている、内輪の読書会で、中島敦の作品を取り上げました。「弟子」と、沙悟浄を主人公にした二つの作品です。 中島敦というと、教科書でおなじみの「山月記」がありますが、あの作品も、主人公が自分の才能を磨ききれずにトラになって、誰も自分をわ…

綺は綺麗のき

ブラッドベリの話ではありません。 中村真一郎の『城北綺譚』(水声社)が出ました。没後遺稿として発見された作品で、今まで単行本に収録されていなかった作品です。 「僕」という語り手が、旧制高校時代に世話になった実業家の遺した手記を紹介するという設…

その地域ならではの

今年の手塚英孝賞を受賞した、猪野睦さんの『埋もれてきた群像』(私家版)を読みました。高知県のプロレタリア文学運動の歴史と、そこにかかわった人たちのことを調べたものです。地方紙の連載をまとめたものです。 プロレタリア文学運動は、弾圧を受けたこと…

長い重みがあればこそ

講談社から出ている『中国の歴史』全12巻を読み終わりました。編集委員のひとりである、礪波護さんが指摘していることですが、こうした形で、他の国の歴史を多巻もので一般書として出せるということに、日本における中国の独自性があるというのはたしかにそ…

未来への信頼

直木賞作家、重松清さんの『娘に語るお父さんの歴史』(ちくまプリマー新書)です。 1963年早生まれのカズアキおとうさんが、1990年生まれの娘、セイコさんに自分の生きてきた時代を歴史として語っていく、という設定のものです。 その中で、永六輔さんの作詞…

勉強すること

少し毛色のちがうものですが、『新しい高校物理の教科書』(講談社ブルーバックス)を読みました。文部科学省の検定基準にとらわれずに、高校生以上の理科に関心のある人が理解できるようにという理念で、物理・化学・生物・地学の4分野にわたって編集されたも…

神と仏

佐藤弘夫さんの『神国日本』(ちくま新書)です。〈神国〉ということばにまつわる先入観を廃して、その言葉が使われ始めた中世初期の用法を検討しようとした本です。世界宗教としての仏教の存在を基盤として、そのなかでの日本の独自性としての〈神国〉という…

主体性の回復?

『月光浴』(国書刊行会)を読みました。ハイチの現代作家のアンソロジーです。ハイチといえば、アンナ・ゼーガースやアレッホ・カルペンティエールの作品で少しなじんでいたり、ジャック・ステファン・アレクシス(訳書では「アレクシ」という表記でしたが)の…

はたらくこと

大浦ふみ子さんの『ながい金曜日』(光陽出版社)を読みました。書き下ろしの作品のようです。大浦さんは、長崎に住みながら作家活動を続けていて、今までも何冊か作品集を出しています。社会的な事象、それも最新の社会問題をいち早く作品化することがよく…

連休です

連休ですので、しばらくお休みします。大浦ふみ子さんの『ながい金曜日』(光陽出版社)の感想・意見などは後日ということで。

追悼

インドネシアの作家、プラムディヤ・アナンタ・トゥールさんが亡くなったということです。彼の作品は、大作(四部作だとか)の最初の、『人間の大地』しか読んだことはないのですが、オランダ支配下のインドネシアで、自分を確立しようとする青年ミンケの生…