2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

研究の深さ

関谷博さんの『幸田露伴論』(翰林書房)を読みました。学部の卒論が実は露伴だったのですが、その頃といえば、露伴に関する文献もそんなに多くはなく、1978年から再刊されはじめた全集が、テキストとして扱われるくらいであったように思えます。 関谷さんの…

努力は認めますが

白樺文学館多喜二ライブラリーが主宰した、中国での小林多喜二シンポジウムの記録が本になりました。(東銀座出版社刊行)3年前からいろいろと多喜二に関する資料を集めたり、こうした集会を開いたり、関連する書物を編集したりと、ずいぶんさまざまな事業…

ひとつ年上

中沢けいさんの、『豊海と育海の物語』(集英社文庫)を読みました。これは、文庫版オリジナルの編集もので、表題作は書き下ろし、あと単行本未収録の作品と、旧作のリバイバル(「ひとりでいるよ 一羽の鳥が」など)とでできています。 中沢さんが「海を感…

出版競争

この前、ソルジェニーツィンについて書いたとき、社会主義リアリズムのことについて、簡単にふれた。「社会主義リアリズム」については、『解釈と鑑賞』の宮本百合子特集でも、『道標』をめぐって話題になっている。 今日の話は、そこではなくて、その関係で…

異神? 外法?

田中貴子さんの『外法と愛法の中世』(平凡社ライブラリー)を読みました。こうした本が廉価版で出るのはいいことだと思いますが、その〈外法〉とされているのが、だ(咤からうかんむりをとった字)枳尼天の修法です。 ダキニの名は、昔幸田露伴の「魔法修行…

共同体の溶解

仲間うちの読書会で、『その名にちなんで』(新潮社)を読みました。インド系アメリカ人の女性作家、ジュンパ・ラヒリの作品です。 インド、ベンガル地域出身の男女が、アメリカで結婚する。そして生まれた男の子に、名前をつけるときに、しきたりどおりにイ…

中条百合子と宮本百合子

難しい話になりますが、『国文学 解釈と鑑賞』(至文堂)が、百合子の特集をしています。刺激的な論文が多くて、一つ一つ紹介すれば、このブログの材料にも事欠かないとは思いますが、まずは、百合子と湯浅芳子との関係を。 『道標』を何回か読んではいるの…

「反体制」知識人

ソルジェニーツィンのことです。自伝『仔牛が樫の木に角突いた』(新潮社)を古本屋で入手しました。けっこう分厚い本だったので、読むのに少し時間がかかりましたが、ともかく、彼がもともと科学的社会主義の思想とは縁もゆかりもない人物だということはわ…

鶴見で鶴見を読む

日曜日に、鶴見の〈新日本婦人の会〉の人たちがやっている読書会に出ました。 鶴見線沿線の文学を考えるというコンセプトで、近代の作品を扱うという流れで、笙野頼子の芥川賞受賞作、「タイムスリップ・コンビナート」をやるので、講師というほど偉くはない…