2008-01-01から1年間の記事一覧

一致点での共同

(2009年1月30日の追記) 誤った前提での論を組み立てましたので、そこに関する部分に消し線を引きます。消し線だけです。追加・修正は全くしていません。 (以上追記おわり) 今年最後ですので、いつまでもひきずっていたくないので、書きます。 今年の「蟹…

行ったりきたり

いろいろと、とりとめもなく。 前にも何度も書いていますが、江戸時代のひとたちには、それ以前の戦国のいくさのなかで、いくさが無意味であること、それは悲惨以外のなにものでもないことを認識して、その上に立って政治をやっていたような気がします。文学…

つくりごと

黒田龍之助さんの『世界の言語入門』(講談社現代新書)です。 アイスランド語からロシア語まで、90のことばについて、五十音順にコラムをならべたものです。アイスランドの次がアイヌ語という形ですすんでいきます。 こうしてみると、たとえ英語がいろいろ…

無責任

谷口一男さんの『江岸に吹く風』(光陽出版社、民主文学館)です。 たにぐちさんは、1927年生まれ、戦前「満洲」に渡って満鉄の仕事をしていたのですが、戦後は郷里の石川県に帰って、仕事をしながら文学に志し、1950年12月号の『新日本文学』に「初冬の一日…

天網恢恢

中国ものが続きますが、大木康さんの『明清文学の人びと』(創文社、中国学芸叢書)です。 大木さんは、高校の先輩に当たる方で、向こうは覚えていないでしょうが、たしかいつぞや学園祭のときに、漢詩を作っているのを拝見したのが、大木さんでなかったかと…

共通項

吉川幸次郎『杜詩論集』(筑摩叢書、1980年)です。 著者の生前に企画されたのですが、どの文章を収録するかを決めた後、1980年4月に著者が亡くなったので、結果的に遺著となったものです。 杜甫の詩について書かれた文章がいろいろと書かれているのですが、…

出現

きょうの『しんぶん赤旗』に、伊藤若冲の屏風が見つかったという記事が出ました。 カラーで出たのですが、鯨と象のペアのものです。 似た構図のものは、前に紹介した『異能の画家 伊藤若冲』(新潮社)に、白黒写真が収録されている、1928年大阪美術倶楽部で…

残ること

岩井忠熊さんの『「靖国」と日本の戦争』(新日本出版社)です。 岩井さんは、戦時中海軍に徴兵され、輸送船で移動中に潜水艦の攻撃を受け、なんとか助かったという経験をお持ちの方です。そういう経験から、日本の戦争について考えています。 この前、福田…

方向

福田和也さんの『地ひらく』(文春文庫、2004年、親本は2001年)です。 福田さんは私と同学年なので、きっと小学生のころに『坂の上の雲』を読んだり、アニメの「決断」をみたり、産経新聞のだしていた〈第二次世界大戦ブックス〉をよんだりしていたのかなと…

またですが

西沢舜一さんがお亡くなりになられたそうです。 勝山俊介の名で発表した戯曲や小説にもいいものが多くありますが、西沢舜一の名でかかれたものでは、『「甲乙丙丁」論-いろはにほへと』(新日本出版社、1981年)が印象に残ります。中野重治を、全人格的にと…

むだづかい

津島佑子さんの『あまりに野蛮な』(講談社、全2冊)です。 『群像』に2年ぐらいにわたって連載されていたものが、最近単行本になったものです。 津島さんがずっと追っている、「子どもを亡くした親」という視点が、この作品でもくり返され、1930年代に台湾…

時代をつかむ

この間、いろいろな非正規のかたがたのたたかいが報道されていますが、その中の映像で、自動車で出勤してくる労働者に門前ビラをくばるところが出ていたものがありました。 そこで宮寺清一さんの「野分け」(『祭り囃子が聞こえる』(新日本出版社、1983年)…

見えなかった未来

雑誌『国文学』(学燈社)の1月号は、プロレタリア文学の特集です。 その中の、中野重治の項目は、室生犀星記念館の館長さんの、笠森勇さんが書いています。その中で、「五勺の酒」の有名な部分を引用しています。「天皇制の頽廃から天皇を革命的に解放する…

うれしくない予測

グラムシ『新編 現代の君主』(上村忠男編訳、ちくま学芸文庫、親本は1994年)をなんとなく読んでいたのですが、こんな文章をみつけました。世論の正常な操縦を攪乱しようとする要素が出現しているが、それらのなかでも、第一に挙げられるべきものに、黄色新…

短編のたのしみ

『民主文学』1月号は、短編小説の特集です。 昔は、どの文芸誌も、1月号には大家から若手までの多くの作家の、短い作品を並べたものです。中村真一郎さんの〈人間精神の諸領域の探究〉と名づけられた一連の作品など、そうした1月号の短編競作の中で書かれた…

論立てとまではいかないが

加藤周一さんがなくなられて、いろいろと感ずるところもあります。 直接お目にかかる機会もなかったので、著作をとおしてのみのかかわりではあるのですが、考えてみれば、1975年に朝日新聞の夕刊に掲載されていた、「言葉と人間」のシリーズが、リアルタイム…

速報

加藤周一さんが亡くなられました。 大きなあながあいたような感じです。

ちがいはどこに

山口昌男さんの『アフリカの神話的世界』(岩波新書、1971年)です。 トリックスターなどの概念をつかって、アフリカの「神話」を分析しています。大江健三郎さんの小説にもたぶんいろいろと影響をあたえたものなのでしょう。 そうした分析自体には、そうい…

こういう時代だからこそ

この前、神奈川の文学館で行われていた堀田善衛の展覧会にいってきました。堀田さんの作品は、『路上の人』(新潮社、1985年)あたりまではほぼリアルタイムで追いかけていたのですが、『ミシェル 城館の人』あたりからあまりふかいりしなくなってしまってい…

翻案

今年のセンター試験の古文の問題文は、江戸時代の作品で、浅井了意の「狗張子」という作品から出題されました。旅商人がある家に一夜の宿を借りたのですが、そこの家は夫の帰りを待つ妻がひとりで住んでいたのでした。 実は、その女性は既に死んでいて、幽霊…

空想から空想へ

流行語大賞のトップテンに、「蟹工船」が選ばれて、本屋の店員さんが授賞式に出席したとかいう話です。雨宮・高橋対談の、そうしたこぼれ話的な話題に、きちんと反応したという、店員さんの感覚がすぐれていたのでしょう。さて、イタロ・カルヴィーノ『レ・…

多面的に

纐纈厚さんの『日本海軍の終戦工作』(中公新書、1996年)です。 海軍内部の史料を使って、海軍首脳の考え方をさぐっていて、決して海軍が平和勢力とはいえなかったことを明らかにしています。 実際、この間いろいろと読んでいると、たとえば小田実さんの『…

伝統

どこの新聞で読んだのかはっきりしないのですが、神奈川県大磯町で毎年1月14日の夜から翌朝にかけておこなわれていた左義長の行事が、今度から土曜日に変更になるということだそうです。 以前は、1月15日が「成人の日」ということで、祝日として固定されてい…

見ていたけれど

26日付の『しんぶん赤旗』に山田和夫さんの文章が載っていました。 この間、小林多喜二と「戦艦ポチョムキン」とのかかわりについて書いて、いろいろな方からおしえていただきましたが、山田さんの文章で、蔵原惟人が『キネマ旬報』に書いているということが…

きちんと見る

杉田聡さんの『AV神話』(大月書店)です。 アダルトビデオのなかにある、女性をおとしめるさまざまな「しかけ」について検証しているのですが、その中で、レイプ映像を主に撮っている監督の作品を、「表現の自由」の面から「評価」している知識人がいると、…

継続

川村湊さんの『文芸時評1993-2007』(水声社)です。 『毎日新聞』に掲載された時評をあつめたものです。 文芸時評なるもの、最近はとんと不人気で、各紙誌とも、だんだんと扱いが軽くなっているように思えます。とはいっても、こうして、長期間の時評が集ま…

自分であること

冨原真弓さんの『ムーミン谷のひみつ』(ちくま文庫、親本は1995年だが増補がある)です。 ムーミンのシリーズに登場する、いろいろな「もの」(「人物」とはいえませんよね)についての考察をまとめています。原作を読んだのは子どもの頃ですが、けっこう覚…

育ち

坪内祐三さんの『東京』(太田出版)です。 1958年東京生まれ(といっても、渋谷区本町というから、第二国立劇場の近くですね)で、東京育ち(東急世田谷線の松原のあたりだそうです)の坪内さんの、成育歴と活動歴のなかの、東京のいろいろな場所を紹介した…

雨の降らない品川駅

李恢成さんの『地上生活者 第3部』(講談社)です。 長編の一部分ではあるのですが、主人公が大学時代、「帰国運動」にかかわっていたときのことを書いています。また、「伽倻子のために」の素材となった事件についてもふれている作品です。 今の時点から見…

ぜいたく

『1995年 未了の問題圏』(大月書店)です。 中西新太郎さんと、雨宮処凛・中島岳志・湯浅誠・栗田隆子・杉田俊介のみなさんとの、連続対論というかたちで、1995年あたりから現代に続く問題点をさぐっています。 それぞれの論者自身が、このテーマで1冊の本…