2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

根っこ

水上勉『故郷』(集英社、1997年)です。 1987年に地方紙に連載された作品なのですが、作者の故郷である若狭地方を舞台にして、人間の戻っていくところとは何なのかを問いかけています。そこに、若狭が原子力発電所が多く立地していることが関係して、そこが…

てのひらで踊る

吉見俊哉さんの2冊、『親米と反米』(岩波新書、2007年)・『夢の原子力』(ちくま新書、2012年)です。 戦後の日本とアメリカの関係にかんして、文化的な受けとめと、原子力の利用という面での受容とを、分析しています。 福島の事故以前と以後と、書かれた…

来るわ来るわ

用事があって、2日ばかり個人メールをあけていなかったのですが、200通余りたまっていました。その中で、本当の用件のあるものは1通だけ。ほかはすべていらないものです。 とはいっても、ここで選挙に関連する話をするためには、連絡先を隠すわけにはいきま…

助け合い

仁科邦男さんの『犬の伊勢参り』(平凡社新書)です。 江戸時代には、お伊勢参りがはやり、時期によっては抜け参りという、ふっと思い立っての参拝もあったといいます。その中で、犬がお参りをすることが、各地でみられたとのこと。首に名札をつけていると、…

相互理解

川添昭二さんの『中世文芸の地方史』(平凡社選書、1982年)です。 九州人の川添さんは、九州の文学と歴史とのかかわりを中心にいろいろと論じてきました。1970年代から80年代はじめにかけての論考を軸にこの本は書かれています。 太宰府に残る史料を軸とし…

現実密着

日本思想大系『近世科学思想』(全2冊、岩波書店、1971-72年)です。 上巻には農業と治水、下巻は天文と医学という形で、蘭学がはいる以前の江戸時代の動向を、基本文献にさかのぼって収録しています。 もちろん、蘭学以前とはいえ、中国や、キリシタン時代…

眼力

三輪修三さんの『工学の歴史』(ちくま学芸文庫、2012年)です。もともとは大学生の教科書として、丸善からでたものを、改訂して文庫に収めたのだそうです。 ものづくりは、今の文明を支える基礎ですが、高校までの勉強ではそうした部分への言及は少ないよう…

20年

スタジオジブリの新作にあやかってか、堀辰雄の本がたくさん店頭にならんでいます。 考えてみれば、映画のタイトルも含めて、こうした形での堀辰雄の利用ができるのも、彼が1953年に亡くなっているので、かれの作品が著作権が切れて、パブリックドメインとな…

気持ちは気持ち

三枝昂之さんの『昭和短歌の精神史』(角川ソフィア文庫、2012年、親本は2005年のあとがきあり)です。 戦時中から占領期の短歌動向を、実作に即して考えています。戦争を賛美した人も、批判した人も、時代の文脈のなかに位置づけて、そのときどきの一所懸命…

土地のもの

『葉山嘉樹・真実を語る文学』(花乱社、2012年)です。 〈三人の会〉という、福岡県豊津出身の堺利彦・葉山嘉樹・鶴田知也を顕彰する会があるのだそうですが、そこが主体となって、葉山の記念講演会の記録と、関連する論考・回想・エッセイなどをあつめて出…

知ってそうでも

佐多稲子『私の長崎地図』(講談社文芸文庫、2012年、文庫オリジナル編集)です。 表題作は1948年の作品ですが、文庫化にあたって、著者の長崎にかかわる作品やエッセイをまとめました。著者の出身地である長崎で送った少女時代の感想や、その後の原爆被害を…

法改正

今回の参議院選挙から、ブログで特定の政党や候補者への投票を呼びかけてもよいということになったそうです。 だからといって、すぐにどうこうしようとは思いませんが(ここを訪れる方は、きっとそうしたことには意識的なかたでしょうから)、それ以外にも、…

復刊

岩波新書が、「もう一度読みたい岩波新書」というタイトルで、10冊の復刊をするそうです。そのなかに、加藤周一『抵抗の文学』(1951年)がはいっています。 フランスのレジスタンス時代の文学についてのエッセイをまとめたものですが、平凡社の『著作集』に…