冷静さ

日本思想大系の『水戸学』(1973年)です。
会沢正志斎の「新論」だとか、藤田東湖の「弘道館記述義」とか、いわゆる尊王思想の権化ともおもわれる水戸の学問なのですが、それでもこれだけまとまって収録されていると、思想の変化もみられます。とくに、会沢正志斎は「新論」(1825年)では文政の打払令の直後ということもあって、攘夷を強く主張しているのですが、晩年の「時務策」(1862年)では、欧米と戦争しても勝てるわけがないのだから、むやみな行動をとるべきではなく、とりあえずは富国強兵の策でいくべきだというのです。
領土や領海を守ると、いっけん威勢のいい発言で人気をとろうというどこかの党首の人とはずいぶん違うように思います。ほんとうの愛国者とは何なのか、きちんと考えなければいけないでしょう。