2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

言い訳

本の話ではないのですが。 首相が、『子育て世代の支援のために、年功型賃金から成果主義賃金にしたい』という趣旨のことを発言したそうです。 子どもがおおきくなれば、それだけ教育費などがかかるので、年齢に応じて賃金が決まるのも、生活維持のためのも…

旅の恥は

石川達三『武漢作戦』(文春文庫、1976年)です。 表題作は1939年1月の『中央公論』に発表され、1940年に単行本化されたとか。そのため、さくせんこうどうがらみのところには伏字などがあります。 長江をさかのぼって武漢に攻める日本軍のことを書いたもので…

はざまで

石黒米治郎『つぎはぎだらけのスケッチ』(群青社、2004年)です。 石黒さんは戦後まもなく、鶴見の造船所で働きながら、岩藤雪夫に学んで文学にこころざし、当時の『勤労者文学』につどう一人として数えられました。その後、レッドパージにあい、いろいろな…

伏流水

土橋寛『古代歌謡の世界』(塙選書、1968年)です。 著者は、日本の古代歌謡を単純に抒情的な側面から理解することを戒め、現代に伝わる民謡の分析から、それと共通する面を見出し、そこをきちんと位置づけるべきだという立場にいます。 農村の社会基盤が変…

かすかな光

仁藤夢乃さんの『女子高生の裏社会』(光文社新書)です。 秋葉原を中心にして、高校生を〈売り物〉にした「商売」がはじまっているのですが、その「お散歩」という仕事をしている子どもたちの実態を描いたものです。その取材を通して、どのような形で彼女た…

積み重ね

松本徹さんの『師直の恋』(邑書林、2001年)です。 松本さんは、古典の舞台を現代にたどり直して、そこに通ずるものを発見するエッセイをたくさん書いているのですが、これもその一つです。 「仮名手本忠臣蔵」といえば、赤穂浪士の討ち入りに材をとった作…

自虐といわれて

エンツェンスベルガー『何よりだめなドイツ』(晶文社、1967年、原本は1967年)です。 当時のドイツの中の現状に対して物申すエッセイ集なのですが、その中に、ラス・カサスの「インディアスの破壊に関する簡潔な報告」についての解説があります。それによる…

先は長い

高橋秀実さんの『「弱くても勝てます」』(新潮文庫、親本は2012年)です。 開成高校の野球部を取材したもので、普通の学校とは少し違った野球を追求している姿を描いています。文庫本には桑田真澄さんが解説を寄せていて、野球というスポーツが、戦時中に精…

ちょっと後から

『文学界』10月号に、赤坂真理さんと内田樹さんの対談が載っています。そのなかで、内田さんは赤坂さんの『東京プリズン』を例に挙げ、女性による新しいきりこみだと評価しています。そこで引き合いに出すのが、〈24年組〉といわれた竹宮恵子さんや萩尾望都…

わかったような

黒川創さんの『リアリティ・カーブ』(岩波書店、1994年)です。 戦争や平和をめぐるいろいろな断想的なエッセイ集とでもいうのでしょうか、『思想の科学』や『海燕』に発表された文章を集めています。戦後の思想や行動を掘り起こして、そこに意味を持たせよ…

これでもかこれでもか

櫻本富雄さんの『戦争はラジオにのって』(マルジュ社、1985年)です。 1941年12月の日米開戦以来の、報道のありようを検証したもので、ラジオが何を伝えたのか、それに従って当時の〈知識人〉たちがどんな発言をしたのかを紹介しています。 特に、ラジオは…