2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

グローバル

昨日の続きを少し。 映画『クーレ・ヴァンペ』では、労働者のスポーツ祭典が終わった後、彼らが乗っている電車の中で、ブラジルではコーヒーが余っているので、焼き捨てているという新聞記事が、乗客の手によって読み上げられます。それをきっかけにして、「…

敵を知る

〈ベルトルト・ブレヒトの仕事〉第6巻『ブレヒトの映画・映画論』(河出書房新社、新装版、初版は1973年)です。 ブレヒトの映画に関するものが収録されているのですが、1932年に公開された映画『クーレ・ヴァンペ』という作品が、シナリオ制作のところから…

外から見る

ブルーノ・タウト『忘れられた日本』(篠田英雄訳、中公文庫、親本は創元社から1952年に出た文集)です。 タウトはご存知の方も多いでしょうが、ナチス政権から逃れて日本に1933年にやってきて、1936年にトルコの大学に赴任するまで日本に滞在し、桂離宮など…

思い入れ

イタリアの作家・(映画監督らしいのですがよく知らないので)のパゾリーニ(1922-1975)の『生命ある若者』(講談社文芸文庫、米川良夫訳、原著は1955年、初訳は1966年、文庫は1999年)です。 1940年代のローマを舞台に、そこに生きる底辺の若者(男)たち…

義理と人情

『近松世話物集』(角川文庫、諏訪春雄校注)の第2巻(1976年)にはいりました。 第1巻の心中物もそうですが、第2巻にも、「冥途の飛脚」のような、かけおちものがでてきます。で、近松の作品が高く評価されているのは、世間の「義理」と人間としての「人情…

ある楽しさ

中野重治のタイトルのパクリといわれそうですが。 菅野昭正さんの『変容する文学のなかで』(集英社)の完結編です。 1982年から2004年までの文芸時評を集めたものですが、2001年まではすでに上下巻で出ていたのを、今回その後の部分を追加して全3冊にしたの…

交通の便

田山花袋の『温泉めぐり』(岩波文庫、親本は1926年)です。 花袋は、けっこう旅好きだったようで、この本でも、全国の温泉をけっこう体験しています。もちろん、十和田湖には行ったことがないとか、ほかにもいくつか未踏の地はあるようで、それもまた、彼の…

死の方向

暑いので、拾い読みですが、ハンガリーの作家、モルナールの戯曲『リリオム』(岩波文庫、徳永康元訳、1951年、原作初演は1909年)と、角川文庫の『近松世話物集 一』(諏訪春雄校注、1970年)です。 いずれも、主人公が死んでしまう話だというと、乱暴な言…

強い違和感

たまたま夕方、NHKの国際情報の番組をみていたら、韓国の大統領選挙の展望をやっていました。すると、野党の有力候補として、朴槿恵(韓国語よみは覚えていないのですが)という女性の方がいるというのです。彼女は、朴正煕元大統領の娘だというのです。 そ…

遍歴

実盛和子(じつもり・かずこ)さんの『埴生の宿』(手帖舎)です。 実盛さんは、民主主義文学会の岡山で活動されている方で、小説だけでなく、短歌も作られている方です。その彼女の生活に取材したとおぼしき短編小説集です。 1928年生まれの作者のことです…

使い方

村上隆さんの『金・銀・銅の日本史』(岩波新書)です。 前近代の日本における金銀銅の採掘や利用に関しての発掘や科学的所見をもとに、日本の技術のありようについて考えています。いろいろな技術的達成と、それを可能にする職人の技については、さまざまな…

繰り返さない

大岡昇平さんの『ある補充兵の戦い』(現代史出版会、1977年)と、『戦争』(岩波現代文庫、親本は1970年初版、1978年改訂版)です。『ある・・・』のほうは、作者が1950年前後に書いた自分の戦場体験をベースにした作品を、対象となったできごとの順にならべた…

記憶をうけつぐ

『御庄博実詩集』(思潮社現代詩文庫、2003年)です。 8月号の『民主文学』の右遠俊郎さんの小説に紹介されていたので、この方のことを知ったのですが、広島で被爆(残留放射能です)し、その後医師として、水島コンビナートの公害問題にも取り組み、その後…

不在

加藤陽子さんの『満州事変から日中戦争へ』(岩波新書)です。 岩波新書が、〈シリーズ日本近現代史〉として、幕末からの歴史を、10人の著者にまとめてもらっているものですが、今回のものは、日本がどのように中国にかかわろうとしたのかを追究しています。…

目の前の展望

NHKの「その時歴史が動いた」は、瀬長亀次郎さんの話でした。『瀬長亀次郎回想録』(新日本出版社、1991年)は、昔読んだことがあったのですが、このほかにも、瀬長さんを題材にした霜多正次さんの小説「宣誓書」(1955年発表)などもあります。 戦後まもな…