2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

発信

岩崎昶(1903-1981)の『日本映画私史』(朝日新聞社、1977年)です。 著者の戦前の行動が記されているのですが、プロキノ(日本プロレタリア映画同盟)の活動について書かれた部分が、中心になっています。今東光が初代のプロキノ委員長だったとか、そうし…

観点

半沢隆実さんの『銃に恋して』(集英社新書)です。 アメリカ社会で、銃がどのように意識されているのかを探ったルポです。日本人でも、とても簡単にアメリカでは銃の保有の許可がおりてしまうなどの、現実がさまざまな形で記されています。 アメリカ人から…

痛み

出先ですので、簡略に。 アイザック・シンガーの『愛の迷路』(角川書店、田内初義訳、1974年、原本は1972年)です。 1940年代のおわり、ニューヨークに逃げてきたユダヤ人男性が、複数の女性と暮らしているときに、死んだと思っていた妻が目の前に現れる。…

圧迫

NHK−hiでは、亀山郁夫さんの解説で、スターリン時代を生きた4人の芸術家の番組をやっていました。エイゼンシュテイン・マヤコフスキー・ブルガーコフ・ショスタコーヴィチです。かれらの人生に、スターリンが落とした影を検証しようという感じでした。 ショ…

大きくいえば

日食は、部分日食ではありましたが、11時40分ごろ、偶然雲の間から、欠けたお日さまを見ることができました。 岩波科学ライブラリーの『太陽は23歳!?』(日江井栄二郎著)も読んでみたのですが、自分たちの周囲の環境を分析し、研究する能力を、人間が持って…

気持ちはわからないでもないのだが

本屋で、岩波書店から出る、『加藤周一自選集』全10巻の、カタログを見ました。今年の9月から、毎月1冊ずつ刊行されるようです。 著者生前からの企画で、収録する文章も、加藤さんの確認を経たものだといいます。それはそれでわかるのですが、加藤さんが亡く…

眼力

萩原遼さんの『金正日 隠された戦争』(文春文庫、2006年、親本は2004年)です。 萩原さんの北朝鮮研究と、論については、緻密な論証が特色だと思います。 内容に関しては、真偽不明の部分もまだあるので、ひかえておきますが、いつかは、闇の部分も明らかに…

表紙を変えても

日本思想大系の『民衆運動の思想』(岩波書店、1970年)をひろいよみしています。 その中で、福島の菅野八郎(かんのはちろう、1810-1888)という人の書いたものがいくつか収録されているのですが、慶応4年に、新政府に宛てた文書があります。菅野さんは、会…

ちょっとしみじみ

岩波文庫の『山上宗二記』(熊倉功夫校注、2006年)です。 タイトルにある山上宗二(1544-1590)は、千利休の弟子で、利休とともに茶の湯のみちに深く参入し、秀吉の勘気をこうむって処刑されたというのです。そういうこともあって、同時代人の立場からの利…

切り継ぎ

平野啓一郎さんの『ドーン』(講談社)です。 2036年のアメリカを舞台に、有人火星探索ミッションに参加した人びとの葛藤を描いた作品です。内容については、もう少しきちんと考えなくてはいけないのですが、平野さんが描いた未来のなかで、おもしろいと思っ…

わかっているんだ

都議選、自民・公明合算で過半数割れになりましたが、石原知事の議会対策が大変だろうということを、NHKは全く言いません。民主も与党だということを、わかっているのですね。都民ではないので、投票はできないのですが、直接応援に行ったところは、当選した…

関連商品

『文学界』の8月号は、あまり取り上げようと思う感じにはなりません。中央公論社が、『サハリン島』を、全集から独立させて復刊しました。岩波文庫の重版もでています。オーウェルの『1984年』も、新訳が出るとかで、『すばる』かどこかで、大森望さんが、自…

強い力

いや、原子核の話ではありません。この前、東京駒場の日本近代文学館の展示を見たのですが、その中で、林芙美子の「めし」の生原稿と、それが単行本になったときの川端康成の解説の原稿が展示されていました。 この作品は、『朝日新聞』に載ったものなのです…

突き抜ける

『文藝』秋号は、小川洋子さんの特集です。 対談があって、小川さんと、ハダカデバネズミの研究で有名になった岡ノ谷一夫さんが語っています。岡ノ谷さんは、動物の『ことば』のありようを研究されているので、ハダカデバネズミは、その過程でのひとつの材料…

方向性

『すばる』8月号から少し。 雨宮処凛さんが、「ユニオン・キリギリス」を新連載です。小説の形で、現代を書こうというかたちのようで、ひきこもり系の人たちの集まりからはじまります。 柴田元幸さんが、ボストンの大学で講義した内容が、「鑑か檻か」という…

節操と選択

静岡県知事に当選された方は、安倍内閣で教育関係の重要な任務をされていた方だとか。そういう方に声をかける民主党も民主党ですし、それに乗って出馬されるほうも、どういうことだか。 粟屋憲太郎さんの『昭和の政党』(岩波現代文庫)を前に読んでいたとき…

象徴的

池澤夏樹さんの編集する『世界文学全集』(河出書房新社)から、カフカとヴォルフという、ドイツ語作家の巻です。 このシリーズの中で、ドイツ語作品は意外に少なく、この巻とあとは、『ブリキの太鼓』だけという予定になっています。それだけ、戦後ドイツの…

長期展望

滝いく子さんの『団地ママ奮戦記』(新日本新書、1976年)です。 著者は、1965年に小平団地(行政上は小平市らしいのですが、交通面では武蔵小金井駅(中央線)からバスでいくところのようです)に入居し、そこで自治会をつくっていろいろと活動したことをま…

照る日曇る日

原田信男さんの『江戸の食生活』(岩波現代文庫、親本は2003年)です。 江戸時代が見直されることがよくあるのですが、安易なものには、江戸時代はこんなに豊かだったのだ、とか、エコだったとか、それですませているようなものも、けっこうあるのですが、こ…