2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

すりこみ

若桑みどり『イメージの歴史』(ちくま学芸文庫、2012年、親本は2000年)です。 西洋の絵画彫刻にみられるイメージを解析して、底に流れる思想を探ろうとしています。 それが、現代日本の公共建築に付随した彫刻にも適用されるところに、おもしろみもありま…

他力本願

日本思想大系の『近世仏教の思想』(岩波書店、1973年)の中から。 この本は、浄土系と法華系のものが収められています。その中で、真宗門徒の逸話を集めた、『妙好人伝』のなかに、こういう話がありました。 加賀の金沢に住む、ある女児の話です。その子が…

よみがえり

中沢新一さんの『大阪アースダイバー』(講談社、2012年)です。 農村と切り離せない江戸東京とはちがう、都市としての発展をした堺大阪に、著者は日本の再生を見ようとしています。いまの大阪を仕切っている人には、新自由主義をいうだけで、再生にはつなが…

証言

『トゥバ紀行』(メンヒェン=ヘルフェン著、田中克彦訳、岩波文庫、1996年、原本は1931年)です。 エニセイ川の上流の、モンゴルの近くにあって、ソビエトの影響下にあった国、トゥバを訪れた著者の記録です。当時、どのくらいの国が、トゥバを独立国として…

生死

今日は小林多喜二の記念日です。 特に、多喜二の作品を読み直したというわけではないのですが、この日は志賀直哉の誕生日でもあるのですね。志賀直哉が、日記に多喜二虐殺のことを書いて、「アンタンたる心持」になったと書いていることも思い出されます。 …

安心

法事があったので、お寺に行ったのですが(母方なので宗派がちがうのです)、そこの宗派でも、本を「読む」のです。漢字を見ながら上から音読で読んでいくというのも、内容と関連して、わかるようなわからないような感覚になります。 仏教が身近なものになる…

空白

徳永直『結婚記』(河出書房、1940年)です。 短編集で、表題作は主人公が結婚相手に会いに、東北まで行く話です。その他、満洲に雑誌特派員として行ったときの経験を書いた作品や、出征する若者を送る作品など、当時の作者がおかれている立場を反映したよう…

そろそろ決着

大塚初重さんの『邪馬台国をとらえなおす』(講談社現代新書、2012年)です。 卑弥呼の国がどこにあったかは、謎解きとしてはおもしろいのでしょうが、考古学の立場からは、どうも九州にあったとはいい難いようです。実際、当時の倭国全体の流れからみると、…

忌避

『コレクション戦争と文学』(集英社)のなかの、〈軍隊と人間〉の巻(2012年)には、16作の作品が収められているのですが、そのなかに、戦後〈勤労者文学〉の担い手として知られた浜田矯太郎の作品が収録されています。主人公が、兵役からのがれるために、…

統合の代償

纐纈厚さんの『侵略戦争』(ちくま新書、1999年)です。 当時うごめきはじめていた〈歴史修正主義〉の考え方に対して、歴史事実を軸とした批判を意図して書かれたものです。 そこで、著者は、近代日本のなかにあるアジア諸国への差別意識が、日清戦争以前か…

南と北

外間守善『沖縄文学の世界』(角川書店、1979年)です。 著者は、沖縄戦のときに、学徒兵として参戦した経歴をもち、戦後本土に渡り、研究者としていきてきました。そのとき、國學院大學に学び、金田一京助から沖縄ことばを研究しなさいというアドバイスを受…

身を立てる

星新一『祖父・小金井良精の記』(河出書房新社、1974年)です。 小金井は越後長岡のひとで、日本の解剖学・人類学の基礎を築いたひとです。彼が津和野の人鴎外森林太郎の妹喜美子をめとってもうけた娘が、磐城平の人星一に嫁いで星新一を産んだということに…