2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

つながる道

鈴木太郎さんの詩集『八月の存在』(詩人会議出版)です。 鈴木さんは、詩人会議に所属しています。詩人会議とは壺井繁治や大島博光の流れをくむ集団で、黒田三郎も議長をつとめていました。 鈴木さんは、1960年の安保闘争のころから、詩をとおした社会への…

正攻法

北村隆志さんの『反貧困の文学』(学習の友社)です。 普通の本屋にはなかなか出回りそうにないので、結局、版元のある全労連会館まで行って買ってきました。 漱石の「坑夫」から井上ひさし「組曲虐殺」まで、プロレタリア文学や民主主義文学の作品をとりあ…

媒介

今日は花田清輝の命日だそうです。 それをみて、ふと、〈前近代を否定的媒介にして近代をのりこえる〉という花田の主張を〈うけつぐ〉といっている人たちのやっていることを、〈『否定的媒介』ではなく単なる『媒介』ではないか〉と誰かが批判していたという…

離陸

郭沫若『中国古代の思想家たち』(岩波書店、野原四郎ほか訳、全2冊、上巻は1953年・下巻は1957年、原題は『十批判書』、初版は1945年、翻訳底本は1950年の改訂版)です。 いわゆる諸子百家と呼ばれる、先秦時代の思想家たちの事跡を、古書から組み合わせて…

広告・宣伝

『加藤周一著作集』18(平凡社)です。 もともとこの著作集は、1978年に刊行が開始され、そのときは15巻だったのですが、その後、1990年代に9冊追加して、全24巻となりました。ところが、その中の第18巻が未刊のまま加藤さんは逝去され、しばらく中断状態に…

出処進退

手塚治虫『漫画の奥義』(光文社知恵の森文庫、2007年、親本は1992年)です。 石子順さんを聞き手とするインタビュー(初出掲載誌はもちろん手塚生前のものです)を没後まとめたものですが、手塚の子どもの頃からの漫画史にもなっているという、けっこう奥が…

動線

このところ、ちょっとした必要から水上勉をいろいろとつまんでいますが、『寺泊』『壺坂幻想』の2冊の単行本収録作品が収められた『水上勉全集』の第24巻(中央公論社、1978年)を、新古書店で税込み105円で手に入れました。端本だとこうなるのでしょうか。 …

いれものの中身

この間、つれあいと一緒に『ホタルノヒカリ2』のドラマを、観られる条件のある限りみていたのですが、今日が最終回でした。まだ、9月の水曜日は2回あるのですが、どうせなんだかごちゃごちゃした(もちろん、作る人は真剣につくっているのでしょうから、そう…

切れる

岩波文庫『雍州府志』上巻(宗政五十緒校注、2002年)です。 雍州というのは本来長安を含む地域の名称で、日本では京都を指します。著者の黒川道祐は、17世紀の人ですが、京都近郊を調べ、京都市内のみならず、山城国を含めた地誌を著したわけです。 ただ、…

仕掛け人

武井昭夫が亡くなったらしい。 新日本文学会から、気に入らない人たちを追い出すために、わざと、それまでもそれ以後も事前に活字にすることのなかった大会への報告を、あえて活字にして、批判する人をあぶりだそうとしたのは、けっこう策士の行動だったよう…

つながり

講談社文芸文庫の『現代アイヌ文学作品選』です。知里幸恵から萱野茂まで、何人かのアイヌ民族の書き手の、アイヌ語や、アイヌ語を日本語に翻訳したものや、日本語で書いたものなどの中から、注目すべきものを選んだものです。 その中に、知里幸恵の日記が少…

偲ぶ

『群像』10月号の書評の欄に、佐伯一麦さんが、三浦哲郎『おふくろの夜回り』(文藝春秋)について書いています。この文章を佐伯さんが書いていたときには、三浦さんはまだご健在だったのでしょうが、はからずも、追悼文のようなかっこうになってしまいまし…

たらいの模様

爆笑問題がいろいろな学者さんをたずねる番組がNHK総合であります。 今回は、子どもの認識の発達を研究している学者さんで、鏡に2秒遅れの映像をみせたときに、それを自分だと認識できるかという実権をやったりしています。ちなみに、3歳児で約3分の1程度の…

歳月

新潮社の『現代ソヴェト文学18人集』(1967年、全4巻)をひととおり読みました。 当時初訳のものばかり集めたので、ショーロホフとかソルジェニーツィンとかは入っていないのですが、それだけに、当時のソビエト文学のありようがみえてくるのかもしれません。…

箸休め

現代教養文庫『江戸の戯作絵本』の第2巻(1981年)です。 江戸時代の戯作、黄表紙の集成です。全巻そろえたのはけっこう前なのですが、こうしたものは集中して読むものではないような感じがして、しばらく放っておいたのですが、しばらくぶりに読んでみたと…

切り口

『仙洞田一彦のショート・ショート集』(青磁社、1985年)です。 仙洞田さんが労働組合の機関紙に書いたものをあつめたものです。最初のころの作品には、オチをつけようとして、うまく回りきれていないものもみえますが、だんだんと焦点が定まってくるように…