2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

発散と収束

中公文庫の『世界の歴史』シリーズ全30巻、なんとか読み終わりました。文庫としての刊行順に読んでいったので、時代順ではないのですが、今の時代の、世界のひろがりを感じることともなりました。 考えてみれば、高校時代の世界史の教科書には、中央アジアや…

小休止

この間、いろいろたてこんでいて、なかなか新しい記事がつくれません。 津上忠さんの『作家談義』(影書房、2010年)、原武史さんの『「鉄学」概論』(新潮文庫)、右遠俊郎さんの『長い髪の少年たち』(東邦出版社、1977年)とか、けっこうおもしろいものに…

独唱から

宮本百合子の文学を語るつどい。終了しました。 1970年代には、百合子の文庫本はあたりまえのように入手できて、横光利一の本のほうが入手困難だったのですが、30年の年月は、それをすっかり逆にしてしまったようです。 それでも、『二つの庭』の新潮文庫(1…

立ち位置

中塚明さんの『近代日本の朝鮮認識』(研文出版、1993年)です。 日本人の多くが、朝鮮を見下してきたことを、教科書の記述であるとか、独立運動に対する観点とか、好太王碑文をめぐる問題とか、そうした事例にふれた、論考集です。 みずからを、東亜の盟主…

とらえかた

河野康子さんの『戦後と高度成長の終焉』(講談社学術文庫日本の歴史24、2010年、親本は2002年)です。今回の文庫化にあたって、細川政権から以後のことが、終章として付加されたようです。 このシリーズは、近代にはいると、政治史というか、政界の動きを中…

ダブル受賞

芥川賞は、朝吹と西村のおふたかたに決まったようです。 朝吹作品は、たしかよしもとばななの「どんぐり姉妹」と同じ月に出たので、やや損をしたような感じなのですが、湘南の風光を背景にしたある種の〈品のよさ〉がにじみ出る作品だという印象が残っていま…

利用法

原克さんの『流線型シンドローム』(紀伊国屋書店、2008年)です。 1930年代から流行した〈流線型〉について、アメリカ・ドイツ・日本の受容を軸にまとめたものです。 アメリカでは、流線型という概念が、単に汽車や自動車だけでなく、女性のスタイルまで表…

入り日

今年のセンター試験、小説は加藤幸子さんの作品です。 干潟の近くに住む老婆が、そこを埋め立ててごみ焼却場にしようとする役所の思惑を、はぐらかしながら生きているという場面が、設問とされました。そこでは、立ち退きを迫ろうとした役所の人間を追い返し…

何のために

石原藤夫、金子隆一さんの『軌道エレベーター』(ハヤカワ文庫、2009年、親本は1997年)です。 静止衛星の軌道上に衛星を載せ、そこから地上にケーブルをおろして、物品を運ぶというのが、この〈エレベーター〉なのですが、もちろん、それを実現させるには大…

共同体

勝山俊介さんの戯曲集2冊、『回転軸』(1972年)、『風の檻』(1983年、いずれも新日本出版社)です。 勝山さんは「回転軸」という戯曲で、日本共産党創立45周年の文芸作品に入選された方で、ほかにも本名の西沢舜一の名であらわした評論『文学と現代イデオ…

読解力

平凡社ライブラリー『肉蒲団』(伏見冲敬訳、2010年、親本は1951年)です。 伝えるところによると、17世紀中国の文学者、李漁、笠翁の著だとか。ストーリーは単純で、女色を極めんとした主人公が、憧れの女性を手に入れたとおもったところ、その女の夫に、自…

確保

新野直吉さんのものを2点。いずれも吉川弘文館からで、『古代東北の兵乱』(1989年)『田村麻呂と阿弖流為』(歴史文化セレクション、2007年、親本は1994年)です。 両者重複するところは多いのですが、律令国家が奥羽地方をどのように自らの領域としていっ…

節目いろいろ

今年で著作権が切れた人と考えて、少し調べたらこういう人がいました。 横浜の労働者作家、熱田五郎。 ドイツ文学の翻訳者、原田義人。 歌人の吉井勇。 いずれも、1960年に亡くなっているので、今年から著作権切れということになります。 今年が没後50年にあ…

またひとつ

うちの檀家寺は臨済宗なので、毎年2回、正月と盆の檀家の集まりの案内に、『法光』という小冊子が一緒に送られてきます。発行所は〈臨済会〉という団体で、東京のお寺のなかに事務局があるようです。 その、今回送られてきた正月号に、芥川賞作家の玄侑宗久…

圧縮

新年になりました。 旧年中の話題ですが、今年はアナログ停波ということなので、それがらみの話をします。 紅白歌合戦は、ラジオの第一放送でも中継されています。ところで、ご存知の方も多いことですが、デジタル放送は、なにやら〈圧縮〉という操作(細か…