2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

はじまりをさぐる

勅使河原彰さんの『歴史教科書は古代をどう描いてきたか』(新日本出版社、2005年)です。 最近の小学校の学習指導要領では、日本の歴史は弥生時代からはじめることになっているようで、米づくりと「大和朝廷」から始まるのだそうです。縄文時代は〈発展学習…

隅をつつく

ティル・バスティアン著、石田勇治・星乃治彦・芝野由和編訳『アウシュビッツと〈アウシュビッツの嘘〉』(白水Uブックス、2005年、親本は1995年、原著は1994年)と、笠原十九司『南京事件論争史』(平凡社新書、2007年)の2冊をまとめてみました。 日本とド…

みごとな出会い

右遠俊郎さんの『小林多喜二私論』(本の泉社)です。 最近の非正規雇用の流れのなかで、小林多喜二が、特に「蟹工船」が脚光を浴びていますが、この本は、1970年代初めに右遠さんが書いた作品論を中心にして、著者の多喜二論を集成したものです。 この前、…

はやりすたり

伊地知鉄男(1908-1998)の『連歌の世界』(吉川弘文館、1967年)です。 連歌というジャンルは、実質的には14世紀と15世紀の約200年間に日本文学の中に位置を占めていたという形になっています。この本では、その時代を中心に、連歌師の仕事を追跡しています…

大本営発表

案の定、自衛隊の人たちのいうことが、二転三転してきました。「おかみ」のやることに口出しするなという状況ではないでしょうに。と、いろいろと考えている間に、いつの間にか徳永直の命日も、小林多喜二の命日も通り過ぎてしまいました。熊本や小樽では、…

必要度

本の話では直接ありませんが、自衛艦の衝突事故です。 「ミサイル迎撃」のためのフネが、足元の漁船を見失うということは、ほんらいこういうフネが必要なのかということになるのではないでしょうか。 「ミサイルがとんでくる」という人がいますが、今、日本…

境界線

橋爪紳也さんの『ゆく都市 くる都市』(毎日新聞社、2007年)です。 都市論をモダニズムの立場から考えるというのが、橋爪さんの発想にあるようで、この本でも、タワーであるとか、水辺の光景であるとか、そうした実用一点張りとはちがった観点から、都市の…

胎動

伊藤千尋さんの『反米大陸』(集英社新書、2007年)です。 最新の中南米情勢と、アメリカ合衆国の中南米政策の歴史を過去にさかのぼりながら分析しています。アメリカの戦争は、ほとんどが謀略的な始まり方をしていることや、「既成事実」をつくりあげるやり…

結果責任

昨日書くつもりだったのは、藤木久志さんの『天下統一と朝鮮侵略』(講談社学術文庫、2005年、親本は1975年)だったのです。 これは、一向一揆との対決の中で、織豊政権がいかに力をつけていったのか、またそれが、最初からもっていた侵略性について論じてい…

おかしい ので

マウスは動くのですが、キーボードが動かないので、入力できません。ということなので、別の環境からいれてみています。ですので、内容も簡単に。 アーサー・ビナードさんの『出世ミミズ』(集英社文庫、2006年)です。 ビナードさんは、大学時代に表意文字…

そうなるのか

ついついケーブルで『7月4日に生まれて』をやっていたので、見るともなしにずるずると観てしまったのですが、トム・クルーズ演じる主人公が、純粋に国を愛しながら海兵隊に入隊し、ベトナムの戦場で負傷し、下半身不随になってしまいます。その体験を通して…

ヒートアップ

関戸明子さんの『近代ツーリズムと温泉』(ナカニシヤ出版、2007年)です。 温泉地が、だんだんと交通の発達によって、地元の人が長逗留する湯治場から、一般のはたらく人たちが利用する温泉宿になっていく変遷を、いろいろな当時の資料などをつかって論証し…

ともかく、お悔やみ

川村二郎さん、逝去。 川村さんの文章は、ずっと昔、岩波の雑誌『文学』が幸田露伴の特集をしたときに、たしか「連環記」について触れたものを読んだのが始まりだったと思います。1984年に出たこれも岩波の『里見八犬伝』では、八犬伝の解釈として楽しく読ま…

関心の向き

原武史さんの著作を三つ続けました。『「民都」大阪と「帝都」東京』(講談社選書メチエ、1998年)・『増補 皇居前広場』(ちくま学芸文庫、2007年)・『昭和天皇』(岩波新書)です。 この三つの著作、著者の関心は昭和天皇に向かっています。それは、山田…

改革のかなめ

『アジアの目覚め』(学藝書林、全集現代世界文学の発見8、1970年)です。 この叢書は、同じ学芸書林が出した、全集現代文学の発見(最近、新装版が出ています)の姉妹編であるようです。監修が野間宏・長谷川四郎・堀田善衛・佐々木基一という顔ぶれです。…

内への視線と外への把握

黒田日出男さんの『絵画史料で歴史を読む』(ちくま学芸文庫、2007年増補版、親本は2004年)です。 絵巻物などの絵画を史料として、そこから読み取れることを論じています。伝頼朝像の絵が、内容と形式から足利直義ではないかという推論をしたり、一遍聖絵に…