2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

手柄話

『新婦人しんぶん』に連載されていた、源河朝良さんの「秋の陽に輝く」が完結しました。昨年4月から、週刊紙なので、45回の連載となりました。毎回約3枚(400字詰め)弱ですので、全体としては130枚くらいでしょうか。 作品の舞台は、1980年代後半の沖縄県の…

新しい知見で

佐々木高明さんの『日本文化の多様性』(小学館、2009年)です。 日本列島に残る、水田稲作ではない農耕文化の流れをたどり、近隣地域との比較をしながら、いろいろな文化状況をさぐっています。 南西諸島では、水田耕作が、冬に田植えをして夏に収穫すると…

内と外

吉田徹さんの『二大政党制批判論』(光文社新書、2009年)です。 著者は、ヨーロッパの政治学が専門なので、そのような外との比較をしています。また、1975年生まれだというので、今の政治情勢をつくりだすきっかけの、小選挙区制導入のときにはまだ学生生徒…

プライド

香山リカさんの『香山リカ的学力論』(フォーラム・A、2009年)です。 お医者さんの立場からのものですので、最近の、〈心を病む〉教師の増加ということも踏まえた論立てになっているようです。 その立場では、医師も教師も、〈代えがきく〉ことが実は大事だ…

名実ともに

長谷川正安『憲法問題の原点』(新日本出版社、1981年)です。 政治文書というものは、時代時代に即して、課題がかわってくるものですが、日本国憲法は、1947年の施行以来改憲をせずに来ています。ですから、憲法をめぐる問題というのも、本質は変わっていな…

広がり

佐多稲子『いとしい恋人たち』(角川文庫、1959年、親本は1956年)です。 作品自体は、1955年10月から週刊誌に連載されたということです。 当時の東京を舞台に、夜間大学に通う女子学生と、その周辺の人たちの姿を描いた作品です。 佐多稲子の作品には、自分…

ねじれ

佐々木潤之介さんの『世直し』(岩波新書、1979年)です。 幕末維新期というと、どうしてもドラマ的な捉え方をしてしまうと、勝海舟だ西郷隆盛だ、坂本龍馬だ篤姫だとかいう、政権にかかわる人たちの動きでみてしまいがちですが、当然、そうした変革をうなが…

抑止力

井本三夫さんの『蟹工船から見た日本近代史』(新日本出版社)です。 日本の北洋漁業の歴史を、蟹工船という、ある意味きわめて特殊なシステムからみています。 タラバガニは、性質上、当時の冷凍技術では、海上で缶詰にしないと、商品として成立しません。…

先祖

アルベルト・モラヴィア『アフリカ散歩』(千種堅訳、早川書房、1988年、原著は1987年)です。 1980年代のはじめごろ、著者がタンザニア・ザイール・ガボン・ジンバブエなどを訪れたときの記録です。アフリカの状況が、ヨーロッパ人である著者から見れば、い…

見えても見ない

一度紹介したことがあったと思いますが、『貨物時刻表』(鉄道貨物協会)という刊行物があります。毎年1回ずつ発行されるもので、全国の貨物列車の時刻が載っています。 今回のJRグループのダイヤ改正を反映した2010年版が出たのですが、なんとなくみている…

素材

この前紹介した『徳永直文学選集』(熊本出版文化会館、既刊2冊、2008年・2009年)ですが、そのなかに、第2巻に、今回はじめて単行本に収録された「みちづれ」(1952年の作品)という作品があります。戦争で夫を亡くした中年女性が、隣家の妻を失った男性と…

単純にはいかない

『国文学 解釈と鑑賞』(ぎょうせい刊行、至文堂編集)の4月号、特集〈プロレタリア文学とプレカリアート文学のあいだ〉です。 こうした啓蒙的学術誌は、昨年に学燈社の『国文学』が休刊し、こっちの『解釈と鑑賞』も、至文堂の発行からぎょうせいの発行へと…

紹介だけで

内容にはふみこまない紹介です。すみません。 ひとつめは、熊本の「熊本出版文化会館」から、『徳永直文学選集』の第2巻(2009年)が出ました。今回は、「妻よねむれ」と「静かなる山々(第1部)」とを中心に、いくつかの短編と評論とが収められています。内…

書く人

ジョージ・オーウェル『パリ・ロンドン放浪記』(小野寺健訳、岩波文庫、1989年、原著は1933年)です。 タイトルどおり、作者がパリやロンドンで下層生活をしたときの経験をベースにして記述したものです。パリのホテルやレストランの実態を描き出しています…

日付

何を意図しているのかとも思うのですが、休日をブロック別に設定しようという提案が、政府与党筋から出ているようです。 そんなことをすれば、全国的な交流ができなくなるのが当然で、そういう動きをつぶそうというのか、いろいろな記念日を、休日とするのを…

着想

岩波文庫の『幕末維新パリ見聞記』(井田進也校注、2009年)です。 1867年にパリを訪れた栗本鋤雲の「暁窓追録」と、1873年に西欧を観た成島柳北の「航西日乗」とをあわせて1冊にしたものです。 柳北のほうは、日録で、日本を出てからパリ、ローマやヴェネツ…

見るべきものは

岩波文庫の、『芥川龍之介書簡集』(2009年)です。 芥川の手紙の代表的なものが収められているのですが、1921年、芥川は中国に出かけます。そのとき、出発前の送別会で、里見とん(文字化けするのでかなで書きます)が、こんなことを言ったのだそうです。「…

ぐるぐる

うちの近所に、小さな古書店があります。小さいですが、「日本の古本屋」サイトにも登録されているので、けっこう良心的に評価していただけるので、何かのときは、そこに持ち込むようにしています。 今日、少しばかり本を持ち込んで、そのときに何気なく棚を…

畏れ

ちまちまと、『御堂関白記』(倉本一宏訳、講談社学術文庫、2009年、全3冊)を読んでいたのですが、当時の人たちは、相当『穢れ』に敏感だったようです。もちろん、当時の京都は、今よりも高温多湿(マラリヤとおぼしき、瘧なる病気がはやっていたようですか…

つきつめる

能島龍三さんの『夏雲』(新日本出版社)です。 1967年に群馬県の国立大学に入学した若者たちを中心に描いた作品なのですが、その中で、主人公的役割をしているうちのひとりである、岡田昇平という青年がいます。彼は、高校時代から本格的な登山をしていて、…

ちょうど1年

吉岡吉典さんが亡くなられて、ちょうど1年です。遺著として、『「韓国併合」100年と日本』(新日本出版社、2009年)が発行されました。 日本と朝鮮半島(最近、韓半島という表記も増えてきましたが、まだなじめません)との関係は、今だからこそ、じっくりと…