2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

選択のむずかしさ

岩波書店の『図書』の4月臨時増刊号で、岩波文庫創刊80年記念ということで、諸家のアンケートが載っています。『私の三冊』ということで、岩波文庫を3点あげるものです。いろいろな考え方があっておもしろいのですが、それにならって、ここでも「私の三冊」…

砂上の楼閣

大げさなタイトルかもしれませんが。 雨宮処凛さんの『生きさせろ!』(太田出版)です。以前、雨宮さんの『群像』に載せていたエッセイについて簡単に触れたことがありましたが、この本では、そうした最近の雇用事情について、よく調査して書いてあります。 …

長期と短期

松井孝典さんの『われわれはどこへ行くのか?』(ちくまプリマー新書)です。 松井さんといえば、『おばあさん仮説』(ヒトが文明をつくることができたのは、生殖能力をもたない〈おばあさん〉が、子育ての負担を軽減することができたからである)という説を…

貧すれば

ドイツのノーベル賞作家、ハインリヒ・ベルの『保護者なき家』(小松太郎訳、角川文庫、1969年、原著は1954年)です。 父親を戦争でなくした二人の男の子(1942年生まれという設定です)が主人公といっていいのでしょうか、彼らの生活を描いています。 一人…

絶望

ロシアの作家、ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』(水野忠夫訳、集英社世界の文学収録、1977年、原著は作者没後の1966年に刊行される)です。 作者はスターリンからうとまれ、不遇のうちに1940年に没した作家なのですが、1960年代にはいって再評価された…

かき集める

森田悌さんの校訂した、『日本後紀』(講談社学術文庫、全3冊、上・中は2006年)です。 この本は、桓武・平城・嵯峨・淳和の4代のころを扱った史書で、平安京に都を定めた、8世紀末から9世紀初頭の時代を扱っています。坂上田村麻呂対アテルイの対決や、薬子…

たとえばなし

小熊英二さんの『単一民族神話の起源』(新曜社、1995年)です。 明治からの日本人論をあとづけ、朝鮮・台湾を含みこんだ多民族国家であった大日本帝国の言説をとらえています。田口卯吉の変化の無残なところとか、柳田国男の位置づけとか、いろいろと知ると…

二等車

中公文庫の『林芙美子 巴里の恋』(2004年、親本は2001年)です。 1931年から32年にかけて、林芙美子がヨーロッパに滞在していたときの、金銭出納帳・日記・夫への手紙で構成されています。『放浪記』で一躍有名になった彼女が、ヨーロッパでもいろいろな人…

はやてのように

大塚英志さんの『怪談前後』(角川選書)です。『群像』に連載していたものを大幅に増訂したものだということです。 柳田国男が、〈民俗学〉を確立する過程に、共通の語り合いができる場と手段の形成という目的があったというのが、大まかな流れだと読めるの…

差異の構造

東浩紀さんと北田暁大さんの対談、『東京から考える』(NHKブックス)です。 おふたりは、ふたりとも1971年生まれ、私立の中高一貫校に通い、東京大学に入学したという経歴の方で、そういう出自から、今の風景を考えようとしています。 町並みが一方では…

ひきうけること

斎藤環さんの『ひきこもり文化論』(紀伊国屋書店、2003年)です。 精神科医の斎藤さんは、ひきこもりのシステムについて考察をしているのですが、その中で韓国にもこうしたひきこもりの状況が結構あるということが紹介されていました。あの国には徴兵制があ…

演出

埴谷雄高『姿なき司祭』(河出文藝選書、1976年、親本は1970年)です。 埴谷と辻邦生が、1968年の夏にロシア・ポーランド・ハンガリー・チェコ・東ベルリンと、当時のソビエトの勢力圏にあった地域を旅行したときの記録です。当時のワルシャワ条約機構参加国…

関与

「河野談話」に関して、おじいちゃん子の方がいちゃもんをつけていて、アメリカにまで文句をつけにいったとかいうので、思い出したのが、加東大介(沢村貞子の弟です)『南の島に雪が降る』(光文社知恵の森文庫、2004年、親本は1961年らしい)です。 その中…

逆でしょう

いろいろとほかのサイトをみていて、気になったこと。その場その場でみているので、具体的なアドレスをあげての指摘にならないのですが。あるところで、中国の国共合作を例に挙げて、共産党に共闘を求めているサイトがありました。善意の方だろうとは思いま…

太平記には月も見ず

『サガのこころ』(平凡社、菅原邦城訳、1990年、原著は1971年)がきっかけです。ロシアの北欧文学研究者のステブリン=カメンスキイという人の著作だそうです。 娘がアイスランドに興味をもっていて、その関係でいろいろと本や地図を探してやっていたのです…

直接の経験

ドス・パソスの『さらばスペイン』(青山南訳、晶文社、1973年、収録された文章は1937年から1939年にかけて発表されたもの)です。 ドス・パソスの代表作といわれる『U.S.A.』は、岩波文庫で、全体の三分の一ほどしかまだ出ていないので、全体的なことはよく…

統一・共同

古本屋の店先の特価本から掘り出した、上田耕一郎さんの対談集『現代を探る』(白石書店、1979年)です。一冊20円のところにありましたが。 1974年から1979年までの対談から選んだもので、当時自民党の参議院議員だった、真珠湾攻撃の参謀、源田実さんとの対…