モデル

河上肇『祖国を顧みて』(岩波文庫、2002年、親本は1915年)です。
河上は留学のために1913年から渡欧し、第一次大戦がはじまったときドイツにいて、ぎりぎりのところでドイツを脱出するという経験をしています。
交戦国になる瞬間の記録であるとか、開戦時に平和を唱えていた社会民主党があっさりと戦争容認に変化するところなど、臨場感あふれた文章が収録されています。
当時のヨーロッパは、そう簡単に行けるところではありませんから、河上の実見談は、実態を知るのに役に立ったことでしょう。とかく日本人は外国をモデルとして考えがちですが、そうした単純なとらえかたへの批評にもなっているでしょう。
その意味で、後年の河上につながるものがあるのでしょう。