2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

誤算

朱建栄さんの『毛沢東の朝鮮戦争』(岩波現代文庫、2004年、原本は1991年)です。 著者は中国の人ですから、中国政府の関係者から直接いろいろと取材をしたり、文書類なども読みこんで、中国が朝鮮戦争に参戦するまでのプロセスを、明かしています。中国にし…

季語

『俳句に詠まれた多喜二と党』(鶴岡書店、2009年)です。 正式には、日本共産党庄内文化後援会の発行ということらしいのですが、ISBNコードをつける関係で、地元鶴岡市の鶴岡書店発行ということのようです。 2008年9月に鶴岡市で行われた〈小林多喜二を語る…

つながりのあれこれ

『韓流百年の日本語文学』(木村一信・崔在●(吉+吉)編、人文書院、2009年)です。 日韓両国の研究者による論文集で、この100年の日本語文学における、朝鮮半島のイメージなどを、いろいろな角度から追究しています。個々の論文は、問題提起という性格が強…

分野ごと

兵藤裕己さんの『〈声〉の国民国家』(講談社学術文庫、2009年、親本は2000年)です。 浪花節を題材にして、近代日本の、民衆の統合に関して論じています。 江戸時代から、日本人みんなが知っているストーリーというのが、だんだんと整備されてきて、それが…

掘り起こし

中西宏次さんの『戦争のなかの京都』(岩波ジュニア新書、2009年)です。 京都のまちに戦争がどのように影を落としているのかを、さぐっています。建物疎開で商店街が消えたところや、空襲を受けたこと(当初目標ではなかったようなのですが、京都市内にも、…

転回

ヘルタ・ミュラー『狙われたキツネ』(山本浩司訳、三修社、新装版2009年、初版1997年、原本は1992年)です。 昨年のノーベル文学賞作家ですが、日本語訳はこれひとつで、どうも、この作品が映画の原作だかノベライズだかなので、翻訳が出版できたようなので…

天寿

堀辰雄の妻の、堀多恵子さんが亡くなられたとのことです。96歳だったそうです。 堀の弟子筋の、中村真一郎も、福永武彦も、亡くなってしばらく経っていますし、1930年代の軽井沢・追分の生み出した文学世界は、これで歴史の中におさめられるということになる…

設定

『1Q84』Book3のネタバレがありますので。 ご注意ください。 ある意味、3冊目がでるということで、予想はされていたのですが、青豆さんは死にません。死ぬのは天吾くんのお父さんなのです。それはそれとして、青豆さんはいろいろと曲折の果てに天吾くん…

戦略

メジャーリーグでは、4月15日が『ジャッキー・ロビンソン・デイ』ということで、すべての選手が42の背番号をつけてプレーすることで、最初のアフリカ系大リーガーを記念するそうです。 日本の野球でも、外国人選手が42の背番号をつけるのも、アメリカでは永…

意外なところで

井上ひさしさんの追悼の気持ちもこめて、『映画をたずねて』(ちくま文庫、2006年、文庫編集オリジナル)です。 井上さんの対談集なのですが、黒澤明・山田洋次・渥美清という、そうそうたるメンバーとの語り合いが収録されています。井上さんが浅草フランス…

引き受ける

佐伯一麦さんの『誰かがそれを』(講談社)です。 あとがきによると、10年ぶりの短編集になるようです。実際、文芸雑誌でも、ほんとうに短い短編小説はあまり人気がありませんし、短編集が出版されることも、そんなにあることではないように思えます。 表題…

こういうのもある

意外に話題になっていなさそうなのですが、『すばる』5月号で、星野博美さんが、五反田界隈を歩いた紀行、「桜田通りの赤い星」を発表しています。 星野さんは、「倉田工業」の跡地を探りにいくのです。星野さんのおじいさまが、多喜二が小説に書いたのとほ…

時空をこえて

藤田勝久さんの『司馬遷とその時代』(東京大学出版会、2001年)です。 司馬遷がたどった足跡をたずねながら、『史記』の成立について考えた、一般書に属するものです。 土器をつかう社会という面では、日本列島も、中国大陸も、紀元前7000年ぐらいには、そ…

またひとり

もう、何人もの方が書かれているでしょうが、井上ひさしさんが亡くなられたということです。 「組曲虐殺」が最後になってしまったのですね。 井上さんの作品を、それと意識して読んだのは、「偽原始人」でした。当時、『朝日新聞』の夕刊には、「偽原始人」…

経歴

佐伯一麦さんの『からっぽを充たす』(日本経済新聞出版社、2009年)です。 仙台で出ている地方紙『河北新報』に連載した読書エッセイをまとめたものですが、毎回いろいろな本をとりあげて、それにまつわる話題を書いています。ですから、佐伯さんの幼い頃か…

共通項

なにやら新党ばやりで、杉並の人と横浜だった人が共同するようです。このふたり、〈新しい歴史教科書をつくる会〉の教科書を導入したという点で共通していますから、きっと、いろいろなところが似ているのでしょう。

自己確認

三木卓さんの『ほろびた国の旅』(角川文庫、1976年、親本は1969年)です。 主人公は、大学浪人中の青年、ある日、図書館で、かつて自分が奉天に住んでいたときに近くにいたおとなが、カウンターにいるのを発見します。そして、彼がもっていた、『五族協和の…

途中なんだが

『ロスジェネ』4号に浅尾大輔さんの小説「ストラグル」が載っています。とはいっても、最後に「前編終わり」とあるので、未完結の作品ということになるので、本当はいろいろと言ってはいけないのかもしれませんが、注目したほうがいいところをとりあえず、あ…

構想力

ポール・ニザン『アントワーヌ・ブロワイエ』(花輪莞爾訳、角川文庫、1972年、原本は1933年)です。 作者の父親の生涯を題材にして、鉄道技術者がだんだんと昇進してゆくなかで、ブルジョワ世界に入っていき、仕事上の〈ミス〉から閑職に追いやられるという…

継続のゆくえ

講談社学術文庫〈日本の歴史〉シリーズ17巻、吉田伸之さんの『成熟する江戸』(2009年、親本は2002年)です。 18世紀を中心にして、人びとの生産や消費の動向に焦点をおいて記述されています。さすがにこの時代ともなると、いろいろな点で現代とのつながりが…

相場

岩波書店のPR誌の『図書』は、毎月定期でとっているのですが、記事だけでなく、広告もけっこう重宝しています。 それで、今月、ある古書店の広告で、〈鴎外全集 全38巻 2万円〉とありました。 いくら、かさばる本の価格が下落しているとはいっても、鴎外の全…