2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

融通無碍

日本思想大系『国学運動の思想』(松本三之介、芳賀登校訂、岩波書店、1971年)です。 国学そのものというより、幕末の国学者による改革論を中心に収録しています。越後柏崎で乱をおこした生田万だとか、井伊直弼のブレーンだった長野義言だとか、そうとうな…

今日のニュースから

別のことを書くつもりだったのですが。例によって『比例は合憲』判決にはひとことも触れない放送局ですが、区割り変更の勧告を出したという報道はします。そこで、東京都江戸川区の一部町内が、区割り変更で葛飾区のほうに移動するということをことごとしく…

100年ののち

池田功さんの『啄木 新しき明日の考察』(新日本出版社、2012年)です。 啄木の外界への関心事をみて、その意識を探ろうとしたもので、「天職」「海」「亡国」「進化論」「中国」への考え方を論じています。韓国併合にあたっての秋風の短歌は知っていました…

たらいまわし

宮崎市定『隋の煬帝』(中公文庫、1987年、親本は1965年)です。 煬帝の一代記というより、隋という国がどうしてできて、そして滅んだかを、追ったものだというほうがふさわしいでしょう。いわゆる魏晋南北朝期というのは、政権の主だけはいれかわっても、そ…

道理

慧門『儀軌』(李素玲訳、ソウル東国大学校出版部、2011年)です。 韓国併合のときに朝鮮総督府が管理して、1922年に宮内庁に『寄贈』した『儀軌』を、韓国に引き渡すまでの運動の経過を、当事者の僧侶のかたが書かれたものです。 日本の計略によって殺害さ…

人気者

網野善彦『蒙古襲来』(小学館文庫、2001年、親本は1974年)です。 網野さんといえば、1990年代あたりは一般向け歴史書の分野ではいわばひっぱりだこともいえる状況があったように思います。この本は、そうした流れの先駆的なものとも位置づけられるでしょう…

裏切り

『社会主義の苦悩と新生』(全集・現代世界文学の発見11、学藝書林、1970年)です。 江川卓・栗栖継のお二人が編者となって、当時のソ連やチェコのいろいろな動きを書いたものを集成しています。 ソビエトロシア関係では、ネクラーソフという作家の、イタリ…

長寿

また寿命の話になりますが、この間、いろいろと調べてきました。というのも、その人の本が出たときには、基本的にご存命なわけですから、その後のフォローが実は欠かせないわけです。著作権の問題もありますし。 特に、外国の方など、古い本だとわからないこ…

あっという間に

高良倉吉さんの『琉球の時代』(ちくま学芸文庫、2012年、親本は1980年)です。 薩摩に敗北する前の、いわゆる古琉球の時代の王国のありようを追跡しています。この時代の琉球国は、東アジアで中継貿易を基盤にした国家をつくりました。 それ以前の政権は伝…

切り替え

水上滝太郎『銀座復興』(岩波文庫、2012年)です。 関東大震災の被害を受けた東京銀座に、復興をねがってバラック造りのにわか居酒屋を開業する夫婦の生き方と、老舗でありながら、もう復興は不可能だと諦観して郊外荻窪にひきこもろうとする男との対比をと…

似ているけれど

『すばる』4月号の、佐川光晴さんの「おれたちの約束」は、作者がずっとつづけている、〈おれのおばさん〉のシリーズのなかにはいる作品です。 親が犯した犯罪のために、故郷を離れて札幌のおばさんのところに引き取られた高見陽介少年の成長とその周囲の人…

土台のうえに

成田龍一さんの『近現代日本史と歴史学』(中公新書、2012年)です。 もともとは歴史の教員を目指す学生への歴史学史の講義というところから出発したもののようなので、とりあげられている著作も、けっこう入手しやすい新書なども含まれています。 戦後歴史…

あわせ技

『図書』3月号には、長谷川櫂、丸谷才一、岡野弘彦のお三方による歌仙「ずたずたの心の巻」が載っています。震災のあとから始めた歌仙で、手紙やネットでのやりとりでつくりはじめたものだとか。丸谷追悼の意味もあるでしょう。 発句が長谷川さんの「ずたず…