2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

集約

『日本文学当面の諸問題』(新日本文学会、1952年)です。 1952年3月に行われた新日本文学会の第6回大会の記録をまとめたものです。当時の新日本文学会は、『人民文学』に拠る人たちが、新日本文学会と対立していた頃でした。この大会の報告の中でも、意識的…

差益

生活瑣事ではありますが。 昨夜、この冬はじめて灯油を買いに行きました。いつも同じ24時間営業のセルフスタンドで買うのですが、灯油1リットルあたり80円、この3月に買ったときの72円より値上がりしています。 円高はどこにいったのでしょうね。

想像力

日本古典文学大系(岩波書店)の『狭衣物語』(三谷栄一、関根慶子校注、1965年)を、少しずつ進めています。なんとか物語の全体のわくぐみが見えてくるあたりまで来たような感じがしています。 主人公は、高貴な生まれです。祖父は帝、父は皇位につかなかっ…

愛情

ナボコフ『賜物』(沼野充義訳、河出版世界文学全集、原著は1937年から38年にかけて雑誌掲載、単行本は1952年)です。 大江健三郎さんの『さようなら、私の本よ』(講談社)で、タイトルの由来になった作品なのですが、ロシア語から直接訳されたのは、今回が…

文脈

森浩一さんの『倭人伝を読みなおす』(ちくま新書)です。 いわゆる魏志倭人伝を、最初から読み直してみようというこころみです。なにせ、倭人伝は、人それぞれにいろいろな読みが展開されているので、こうしたものもあっていいのでしょう。 三国志そのもの…

網の目

田中伸尚さんの『大逆事件』(岩波書店)です。 事件だけでなく、被告とされた人の家族のその後なども追っていて、〈事件〉から100年という時の流れの中で、変わらずに残っているいろいろな〈しばり〉についても考察しています。 特に、戦後行われた再審請求…

切り替え

たまたま、『ブラタモリ』の最後だけちょっと見たのですが、そこで、団地がでてきてタモリさんが、こんな趣旨のことをいっていました。『日本人は明治になって江戸の文化を全部捨ててしまった』 全部といっていいのかどうかとは思いますが、〈和魂洋才〉とい…

あてこみ

今月の岩波文庫の新刊のなかに、坂崎紫瀾の『汗血千里の駒』があります。 坂崎と聞いてもご存じない方もいらっしゃるでしょうが、大河の『龍馬伝』の最初で、功成り名遂げた岩崎弥太郎に、〈龍馬のことを聞きたい〉と接近した男が登場しますが、それが坂崎な…

反省

林博史さんの『シンガポール華僑粛清』(高文研、2007年)です。 1942年、日本軍はシンガポールを占領しましたが、そこで中国系住民を大量に裁判にもかけずに処刑したのです。その記録を追ったものです。 当時井伏鱒二が、軍に徴用されてシンガポールにいて…

引き際

ちょっと続きですが、古田武彦さんは、やはり稲荷山古墳の鉄剣の段階で、九州王朝説を再検討すべきだったと思います。その土地の実質的な支配権と、王権の問題を、きちんと歴史学の到達にたって検討すべきであって、そこを怠っておいて、歴史学からの応答が…

二倍

『図書』の11月号に、明治の始めごろに、日本の暦の研究した人の紹介が載っています(筆者は長島要一さん)。デンマークからやってきた電信の技術者で、日本の女性と結婚するなど日本文化への傾倒が深く、それがこうした研究につながったようなのです。 その…

すげかえ

山田美妙『あぎなるど』(中公文庫、1990年、初刊は1902年、親本は1942年)です。 山田美妙は、1880年代末、尾崎紅葉とともに硯友社の創立当時のメンバーとして新しい文学のために活躍、言文一致体、とくに〈です・ます〉調の文体を創出しました。『坂の上の…

復刻

島村輝さんのブログで、『人民文学』が復刻されて、不二出版から刊行されるという話を知りました。 この雑誌、なかなか読めなくて、駒場の近代文学館で以前そこに所蔵されていたものを読んだのですが、早稲田大学の図書館にはなくて、けっこう調べるのが大変…

縦と横

電子書籍の話です。 村上龍さんが、電子書籍の会社を立ち上げるというニュースをテレビで見ました。 紙の本よりも、持ち運びがしやすいし、たぶん閲覧(配信)料金も安いのかもしれません。 けれども、やはり気になるのは、配信元のデータが壊れたらどうする…

継続の意識

後藤致人さんの『内奏』(中公新書)です。 中公新書は、こうした実証史学的な近現代史ものを、けっこう出版していて、その点では岩波新書とはまたちがった味をだしているのですが、この本は、昭和天皇をめぐる政治史といったところに焦点があてられています…

通過ポイント

とある若手俳優が、とても巨額の賞金を出すエンターテインメント系の文学賞に応募したら、入選が決まったそうです。で、その方は、なぜか賞金を辞退するとかいう報道もありました。 辞退するくらいなら、なぜその賞に応募したのかが解せないのですが、自分の…