都びと

高橋昌明さんの『清盛以前』(平凡社ライブラリー、2011年)です。
大河の清盛は視聴率が悪いとばかり評判だそうですが、なじみのない時代を描けばそうなるのはやむをえないのですから、それは覚悟の上だったのではないでしょうか。
それはそれとして、清盛より前の世代が、どのように院の近臣として力をつけていったのかが、この本では追求されます。武者の技で生きることを選択した中流貴族とでもいえばいいのでしょうか。伊勢平氏というのが、伊勢を財政的基盤にした都の一族だということを論証して、地方武士団が中央に進出したというのとは違うのだと示します。
たしかに、伊勢平氏にしても、河内源氏にしても、中央の摂関家あたりにつかえていたわけですし、受領として任地におもむき政務に当たる(ひどいのが内乱を挑発した陸奥源頼義でしょうが)のが任務であることは、『今昔物語集』などの説話集にたくさん出てくるわけです。それをきちんと、当時の日記なども含めた文字資料を読み解きながら、解明しています。
それにしても、日本は〈家柄〉社会をつくりあげてきたというのも、よくよく考えるべきことなのでしょうね。