2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

支えるもの

しばらく間があきましたが、高橋博巳さんという江戸時代を研究している方の、『画家の旅、詩人の夢』(ぺりかん社)です。 論文集で、江戸時代(18世紀)の画家や詩人たちの動向を論じたものです。もちろん、この時代の「詩人」とは、漢詩を作る人のことです。 …

女性は謎か?

内輪の読書会、カナダの女性作家、アリス・マンローの『イラクサ』(新潮社)でした。 表題作は、離婚した主人公の女性が、友だちのところで、子どもの頃一緒に遊んだ男性と再会する話です。彼女は、彼と何か起きるかもしれないと、彼と過ごした子どもの日々を…

そういう思考回路なのか

林さんの話題をもうひとつ。 『昭和イデオロギー』に触発されて、ひさしぶりに戸坂潤を読もうと思って、平凡社の東洋文庫のシリーズから出ている、『思想と風俗』を読みました。親本は1936年に出たそうですが、内容的には70年たっても古びない。というよりも…

敗北のプログラム

林淑美さんの『昭和イデオロギー』(平凡社)です。中野重治や戸坂潤、坂口安吾などを論じた論文集です。林さんは新潮社の文学アルバムの中野重治の巻の編集もした方で、そういう意味では専門なのでしょう。 巻頭の論文は、中野の「雨の降る品川駅」に関しての…

何かがちがう

トルコの作家、オルハン・パムクさんの『雪』(藤原書店)を、やっとこさ読み終わりました。一日寝込んでいた日もあったのですが、それにしても、この厚さの本にしては異常に時間がかかったような感じがします。悪い作品ではないのですが、どうもとっかかりが…

無理して読んではみたけれど

明日が、6月16日、『ユリシーズ』の日です。アイルランド生まれの英語作家、ジェイムズ・ジョイスが、大作「ユリシーズ」の舞台にした日です。わが国の翻訳文化は、ジョイスの作品も平然と翻訳するだけの蓄積があり、「ユリシーズ」の場合も、最近の丸谷才一…

全否定という情熱

槙村浩『日本詩歌史』(平和資料館・草の家)を入手しました。 この前書いた、猪野睦さんの本に触発されて、手に入れたのですが、槙村の情熱が感じられるものでした。 もちろん、ここに書かれた日本文学に対する全否定ともいうべき評価には異論はありますが、…

読み飛ばしは危険だ

『日本文学全集 田山花袋集』(筑摩書房)を読みました。 もともとは、最晩年の長編「百夜」をめあてに、古本屋の廉価本の棚から見つけてきたのですが、その中にはいっていた中篇、「ある僧の奇蹟」に驚きました。といっても、最初に読んだときには気がつかな…

情報のかたより

新藤通弘さんの『革命のベネズエラ紀行』(新日本出版社)です。 最近こそ、チャベスさんの演説集『ベネズエラ革命』(現代書館発売)があったりして、ベネズエラのことが少しは知られるようになりましたが、昔は阪急ブレーブスにいたマルカーノ選手の出身国だく…

反ユートピアというもの

イリヤ・エレンブルグの『トラストDE』(海苑社)を読みました。名前だけはきいたことがあったのですが、オランダ生まれのある青年が、ヨーロッパを滅亡させる話です。毒ガス爆弾だの、細菌兵器だのと、ぶっそうなものをつかって、いろいろな戦いが起きる。フ…

通史のつよみ

鹿野政直さんの『岩波新書の歴史』(岩波新書)です。 岩波新書が、現在の新赤版にして1000点をこえたので、新たに今の視点から、過去の歴史をふりかえろうとして企画したものです。 今までにも、この手の本は何回か出ていたのですが、今回は著者名を明らかに…