2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧

しなやかさ

茨木のり子さんの『倚りかからず』(ちくま文庫、親本は1999年)です。 といっても、今回文庫版にあたって増補された作品なのですが、韮崎高校出身のサッカー選手の「彼」(茨木さんは、本名を書いていないので、ここでも書きませんが)の、ことばの的確な使…

とっかかり

いろいろと読んではいるのですが、どうもうまくタイミングがあわなかったりするので、新しいものも書けないでいました。 新日本出版社が1970年代後半に出版した、『世界短編名作選』全12冊を、ようやく全部手に入れました。古本屋をめぐったり、サイトで注文…

実用的

武内孝夫さんの『こんにゃくの中の日本史』(講談社現代新書、2006年)です。 こんにゃくという地味な作物が、19世紀からの関東地方の農村にどのような影響を与えていたのかを、現地調査もしながらあとづけた、おもしろいものです。 こんにゃくの実用化とい…

へんなあきらめ

フランス語で書く中国出身作家、ダイ・シージエの『バルザックと小さな中国のお針子』(新島進訳、ハヤカワ文庫、原著2000年、親本2002年)です。 1970年代前半、中国が「文化大革命」で、知識青年をぞくぞくと農村に送り込んでいた時代に、農村で「再教育」…

よりどころ

イタリアの作家、ヴィットリーニの『シチリアでの会話』(鷲平京子訳、岩波文庫、2005年、原著は1941年刊行)です。 作者は、ファシスト党に希望を抱いた時代があって、エチオピア侵略のときも、エチオピアにいわば「王道楽土」を建設できるのではないかとい…

わたくしごと

齋藤希史さんの『漢文脈と近代日本』(NHKブックス)です。 『日本外史』の漢文体からの脱却が、近代日本の文章をつくりあげていったという指摘には、明治の文語文(普通文だそうです)がもつ、漢文の規範性から西洋の文物を導入する文章への移行の性質のあ…

冗談じゃない

長崎市長、撃たれる。 とうとう日本も、選挙の候補者がテロにあう事態になってしまったかと、慨嘆しきり。そうした「空気」を徐々につくってきた、世の中自体をなんとかしなければならないのだろう。(追記)市長は午前2時に死去。お悔やみいたします。 今回…

ことばではないけれど

若桑みどりさんの『ケーテ・コルヴィッツ』(彩樹社、1993年)です。 20世紀初頭に活躍したドイツの版画・彫刻家のケーテ・コルヴィッツの伝記です。宮本百合子や魯迅が、彼女の作品を論じているので、名前だけは知っていましたが、こうした形で簡単な紹介す…

上部構造

北條元一さんの『ハムレット論』(本の泉社)です。 1950年に刊行されたものの再刊なのですが、あわせて、遺稿となった、『ハムレットの現代に呼びかけるもの』と合本の形で刊行されました。 ハムレットは、当時の社会の矛盾を体現した人物で、それをのりこえ…

権利と義務

宮武久佳さんの『知的財産と創造性』(みすず書房)です。 もともとは『すばる』に、「所有の誕生」として発表されたものをもとに加筆したものだといいます。この連載は、ちょうど篠原一の盗作騒動の直後からはじまったので、ひょっとしたらこの騒動と関連した…

空気を読む

もう少し、『浮雲』の話です。といっても、読み直したわけでもないので、あやふやな記述になってしまうと思いますが。 「近代的自我」がもてはやされた時代には、『浮雲』は、目覚めた内海文三が、時流におもねる本田昇やお勢を批判しているという文脈で読ま…

委任

明日が投票日だからというわけではないのですが、どうも、「マニフェスト」というものがよく理解できません。何か、「マニフェスト」が流行するようになって以来、当選した人が、なにか白紙委任をとりつけたような、独裁者になっているように見えるのです。…

二枚舌

今日の『しんぶん赤旗』の投書欄に、教師をめざす人の投書がのっていました。それによると、教員採用試験のための受験対策で、06年教育基本法と、教育再生会議をほめることを要求する想定問答がされたというのです。 実際の採用試験でも、そうした設問がなさ…

記憶と伝承

埼玉県知事の、自衛隊員を侮辱した発言は、いちおう「陳謝」したそうです。結局、こういう人にとっては、自衛隊の人は、人間の尊厳など考えないで上官の命令でなんでもするという、単なる捨て駒でしかないのでしょう。そういう人を衆議院議員にした民主党、…

先に手を出す

岩波現代選書の『南部アフリカ』(1979年、原著は1976年)です。この本は、ポルトガル領だった地域、南アフリカ、ジンバブエのそれぞれについて、その地域の解放運動に長く携わってきた人たちが書いた論文をまとめた本です。原著が出たときには、アンゴラと…

情けない

共産党の横浜市泉区の市議会候補者が経歴詐称の前歴があったことが発覚したので、候補者活動をとりやめるのだそうです。 弁護士でもないのに、名刺や年賀状に弁護士だの司法書士だのと書いたとか。 なんなんでしょうね。