2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

くいちがい

野口冨士男『風のない日々』(文藝春秋、1981年)です。1980年に『文学界』に連載された長編で、1930年代半ばの東京を舞台にして、ある銀行員がふとした行き違いで妻をひどい目にあわせるという話です。彼は、最初の結婚が壊れた後、義兄を通じて持ちこまれ…

地方のこころ

大地進さんの『黎明の群像』(秋田魁新報社、2002年)です。 著者は「秋田魁新報」の記者で、新聞に連載したものをまとめたものです。 1920年代はじめに、秋田出身の小牧近江、金子洋文、今野賢三らを中心にして発行された雑誌『種蒔く人』の姿と、この3人の…

素朴

今日は正岡子規の命日だそうです。子規といえば、日清戦争に記者として従軍したことが知られていると思いますが、そのときに、〈無邪気〉な対応をしていたと聞いています。 日清戦争のときに、きちんとなぜ戦争を始めたのかを総括していれば、その後の日本人…

勝ちたい

総理の談話がでて、支持率があがったという調査もあるようですが、よくよく考えると、あれは「日露戦争勝利110年記念」の談話ですね。いくら『負け戦』を認めたくないという気持ちはあっても、やってはいけないことをしたようにも思うのですが。 1か月遅れの…

転換期

松田解子『あすを孕むおんなたち』(新日本出版社、1992年)です。 作者の晩年の作品で、『新婦人しんぶん』に連載されたようです。1945年5月から約一年間の、作者の周囲をモデルにした作品で、敗戦濃厚となった時期から、女性も選挙権がもてるようになった…

亡命

佐藤静夫『トーマス・マン』(新日本新書、1991年)と、長橋芙美子『アルノルト・ツヴァイク』(近代文芸社、1995年)です。 ここで取り上げられた二人の作家は、いずれもドイツから亡命した人たちです。片方はアメリカに、もう一人はイギリス委任統治領のパ…

タイミング

郭沫若『李白と杜甫』(講談社文庫、1976年)です。 文革時代の著作なので、李白をもちあげ杜甫を落とすという、いかにも的な作品です。個々の読みそのものには問題はないのでしょうが、少し意図が透けすぎではという感じもします。 この本、1971年に原著が…