2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

あっちへいったり

徳永直の「他人の中」だったと思うのですが、自伝的な作品ですので、これから紹介する話も、たぶん事実にもとづいているのでしょう。 主人公(数えで16か17です)は米屋に住み込みで奉公しているのですが、ある夜、先輩から女性のいる場所に連れてゆかれます…

軽いつもりで

前に、つれあいが韓流にはまっているといいましたが、今朝も、夜中のケーブルを録画して、〈キム・サムスン〉のドラマを観ていました。パティシエの女性の恋物語なのですが、そのお相手の元カノが、アメリカに行っていたのが帰ってきて、体調が悪いというの…

利用

足立正恒さんの『現代の反動思想と観念論』(新日本出版社、1989年)です。 1980年代前半の、いわゆるポスト・モダンの思想への批判が、けっこう力を入れています。 浅田彰の『構造と力』とか『逃走論』などが俎上にあがっています。 もちろん、浅田さん自身…

ポジティブに

アンナ・ゼーガース『ほんとうの青色』(K.小森、小林昌子訳、ワイマル友の会東海支部、1987年、原著は1967年)です。 訳者クレジットで、小森さんの名前がイニシャル表記しかみつかりませんので、こう書かせていただきます。 私家版のようなのですが、東京…

再現

田邊雅章さんの『原爆が消した廣島』(文藝春秋、2010年)です。 田邊さんは廣島の産業奨励館のすぐとなりにある家で生まれ育ち、国民学校2年生のときに疎開中に原爆が投下され、母と弟は家にいたのでたぶん即死、父親は陸軍の軍人で市内で被爆、15日に死去…

頭かくして

尾崎秀実『ゾルゲ事件 上申書』(岩波現代文庫、2003年)です。 ゾルゲとともにスパイだという容疑で収監された尾崎が、いわゆる〈転向手記〉として書いた、二つの文書を収録しています。こうした〈手記〉のむずかしさは、どこまでが本当に変わったのかが、…

ますます深く

大城立裕さんの『普天間よ』(新潮社)です。 沖縄の戦闘を描いた作品と、書き下ろしの現代を描いた表題作をあわせた短編集です。大城さんは、上海の東亜同文書院に在学していて現地で召集され、沖縄戦のときには沖縄にはいなかったので、これらの作品は、体…

言いがかりなんだけど

集英社の〈コレクション 戦争×文学〉のシリーズの刊行が開始されました。 前にも紹介しましたが、けっこう視野の広い編集をしていて、完結すればおもしろいものになるかもしれません。さて、今の書籍には、ISBNコードがついています。これは、1980年代の初頭…

重荷

山中恒さんの『戦時児童文学論』(大月書店、2010年)です。 小川未明、浜田広介、坪田譲治の3人の児童文学者が、戦時下にどのような作品を書き、どういう発言をしていたかを拾ったものです。 戦時下の、作家やジャーナリストの出処進退に関しては、このとこ…

杓子定規

旺文社は、毎年大学入試問題集を出版しています。今年も、私立大学編が出たので、なんとなくながめていたら、中村稔さんの文章を題材にしている大学がありました。どこかは忘れてしまいましたが、そこには、こんなことが書かれていました。中村さんが、安東…

つくりごと

『神話と教育』(新日本新書、1969年)です。 当時の〈神話教育〉をすすめようとする動きに対抗して、直木孝次郎さんのような古代史学者や、本多公栄さんのような教育実践の立場からの意見などを集めたものです。日本の神話が、政治的な意図をもってつくられ…

広がって

なかむらみのるさんの、『阿賀野川』が、〈憲法九条を守る阿賀野の会〉から発行されました。 もともとは『しんぶん赤旗』に連載された小説なのですが、最近はそうした作品も、単行本になるのは難しいようで、作品のモデルになった新潟県阿賀野市の〈九条の会…

参入

『群像』の匿名コラム欄は、「侃侃諤諤」というタイトルです。けっこう長く続いていて、ある意味、『群像』の名物といっていいでしょう。 この7月号ですが、文芸家協会とペンクラブの話題です。いつもはパロディやくすぐりの多いこの欄なのですが、けっこう…

力を抜く

回想記『「近代文学」創刊のころ』(深夜叢書社、1977年)です。 雑誌『近代文学』創刊30年を期して、当時の関係者に寄稿を依頼したものを、埴谷雄高が取りまとめ役になって本にしたものです。ですから、みなさんけっこう勝手なことを書いていて、そちらのほ…

朕の命令

オーウェルの『1984年』にこんな場面がありましたよね。 主人公の勤める部局で、いままで敵対していたB国と手を結び、同盟していたC国と敵対することになったので、それまでの公的資料をすべて〈B国と以前から同盟していて、C国と敵対していた〉と書き直…

背伸び

石川淳『夷斎遊戯』(筑摩書房、1963年)です。 石川のエッセイの中では、わかりにくいほうに属するものだと思います。ですので、昔読んだなくらいな感覚なのですが、石川淳のエッセイは、高校生くらいが、なんとなく背伸びしてみたいときに読むような感じで…

白虹

昨日の昼、太陽のまわりを暈がかかったとかいいます。 むかし、中国では、兵乱のきざしとして恐れられた〈白虹貫日〉はこのことだという説もあるようです。 戦国のむかし、刺客の荊軻は、秦王をねらうべく、燕国から旅立ちました。そのとき、この現象が起き…