2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

実のなかの虚

西野辰吉『東方の人』(東風社、1966年)です。 1960年代前半に『文化評論』に載せた連作長編で、大逆事件の被告とされた奥宮健之と、その周辺の人びとを描いています。日本の韓国併合にいたる朝鮮半島への進出の状況や、その中で生きるひとを描くという野心…

高揚

『文学・芸術の繁栄のために』(駿台社、1954年)です。 1953年に中国で開かれた、「中国文学・芸術工作者第2回代表大会」なるものの報告や発言で、活字になったものを日本で編集したものだそうです。 中華人民共和国ができて4年というところなので、みんな…

北のまちではもう

にしうら妙子さんの『淡雪の解ける頃』(民主文学館)です。 作者は、北海道に生まれ育った方で、十勝の大樹町に長く暮らしていたのだそうです。その時代に書いた作品を集めたもので、町の文芸誌にだしたものもはいっています。作者自身の体験にもとづくと思…

あおる

加藤陽子さんの『戦争まで』(朝日出版社)です。 中学生や高校生に対して、昭和戦前の日本がとった選択をふりかえるという企画です。当時の為政者の選択の中に、白色テロへの懸念があったことを位置づけていることは、見落とせないことでしょう。そうした、…