2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

書いてこそ

磯田道史さんの『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、2014年)です。 各地の古文書や古記録から、噴火や地震や津波、高潮や土石流などの記録を探り出し、現在の状況にあてはめていくというものです。もともとは新聞連載だったので、それぞれの記述は簡…

生き延びて

『母のくれたお守り袋』(滝平二郎、岩崎書店、1991年)です。とくに一貫したテーマのある著作ではなく、いろいろなところに発表した文章を集めたものです。 滝平さんは1921年の早生まれ(本当は4月半ばの生まれだったのに、早く学校にいったほうがいいとい…

地元の名士

千曲山人(1928−2011)の『一茶を探りて』(文藝出版、2005年)です。 長年、地元の俳諧師としての一茶を研究してきた千曲さんの、長野県のあちこちに残る一茶のあとを探訪する記録でもあります。各地に残る遺品などは、当時から一茶が地域では篤く崇敬され…

どこを向く

『女性のひろば』4月号に、和田静香さんという方のエッセイが載っています。 先場所の優勝後会見のときに、白鵬がいったことばを扱いながら、横綱を擁護しています。白鵬の発言の本旨は、底流にある〈日本人至上主義〉への批判であり、それをわれわれは克服…

まるくなる

『麹町 二婆 二娘 孫一人』(中沢けい、新潮社、2014年)です。 新聞連載作品なのですが、2010年から11年の東京を舞台に、1923年・1935年・1959年・1971年・1995年うまれの5人のいのしし年の女性が住む家を描いています。配偶者とは死別や離別をしているので…

舌禍

野上豊一郎・野上弥生子『山荘往来』(岩波書店、1995年)です。 戦時中から戦後はじめにかけて、野上弥生子が北軽井沢の山荘を拠点に生活していたころの、夫婦の手紙をまとめたものです。戦時下の物資逼迫のときに、どのように対応していたのか、戦後の激動…