2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

視野

網野善彦、鶴見俊輔対談、『歴史の話』(朝日新聞社、1994年)です。 二人の話題の豊富なことは、言うまでもないことですが、いろいろと示唆に富む話もあります。日本の植民地支配は、どこにいっても稲作と神社がついてまわったことなど、やはりきちんとおさ…

動くとこたえる

鶴岡征雄さんの『私の出会った作家たち』(本の泉社)です。 鶴岡さんが、リアリズム研究会から民主主義文学同盟の結成、その後の動きに関して、当時事務局員だったときの回想を主としています。文学運動の歴史にかんする回想記としては、ずっと昔に、窪田精…

蛇足とまではいわないが

佐多稲子『樹影』(講談社文芸文庫、1988年、親本は1972年)です。 長崎を舞台にして、被爆者の画家と、彼を愛する華僑女性との交流を描く作品です。もちろん、画家には妻子がいるのですから、女性との関係は、公然とはできないけれど、誰もが知っているとい…

今も昔も

ドナルド・キーンさんの『百代の過客』(金関寿夫訳、朝日選書、1984年)です。 平安時代から江戸時代までの日本人の書いた(和文、漢文は問わず)日記・紀行を材料にして論じたものです。有名どころのものもあれば、ほとんど誰も読まないような文を取り上げ…

土壌

宇津井健さん、蟹江敬三さんと、有名な役者さんが亡くなられました。この世代の役者さんは、多くが新劇の劇団から映画やテレビに進出していったのだという印象があります。 けれども、最近のひとたちはどうでしょうか。新劇の世界も、それだけでやっていくの…

アンソロジーの多様さ

筑摩の現代日本文学大系の『現代名作集一』(1973年)です。 明治23年の宮崎湖処子「帰省」から昭和20年の渋川驍「柴笛詩集」までの、ひとりでは文学全集の巻を占めるには少し足りないと判断された作家たちの作品が、一人一作収められています。 文章も文語…