2006-11-01から1ヶ月間の記事一覧

悪い冗談にもならない

政府与党は、教育基本法の「改正」案を、参議院で12月8日に可決したいと狙っているそうです。 おじいちゃんにあこがれているとは知っていましたが、まさかおじいちゃんが閣僚として、詔書に連署したあの「12月8日」に可決をねらうとは、日本をふたたびあの時…

立場と人情

斎藤淑子さんが、『ウワーッ! 飛行機が落ちてくる』(光陽出版社)という本を書きました。1977年に横浜市で起きた、米軍機墜落事件についての本です。著者は、このとき地元緑区(いまは青葉区になっていますが)選出の神奈川県議会議員であったので、この本の中…

臣下の礼

棚橋光男さんの『後白河法皇』(講談社学術文庫、親本は1995年)です。 棚橋さんは、もともと書き下ろしで後白河論を書くつもりが、中途でなくなられたので、遺稿集のような感じでこの本が編まれたのだそうです。鎌倉から見た法皇像とはちがう、新しい論を展開…

だまされないために

またつながりですが、エドワード・サイード『ペンと剣』(中野真紀子訳、ちくま学芸文庫、2005年、ただし原著は1994年、親本は1998年)です。 パレスチナ問題に対してのサイードさんの意見に関しては、それが妥当なのかどうかはよく判断できないのですが、とも…

記憶してください

小森さんのつながりというわけでもないのですが、たまたま大江健三郎さんの『「伝える言葉」プラス』(朝日新聞社)を続けて読みました。小森さんは、大江さんの文章を取り上げながら、初期大江作品を分析していたものですが、そういうこと抜きにも、大江さん…

文学者の責務

小森陽一さんの『ことばの力 平和の力』(かもがわ出版)です。 「九条の会」の事務局として東奔西走している小森さんの、講演をベースにした、近代日本の文学者四人についての本です。 チョムスキーが、ベトナム戦争に反対していたころ、彼の専門の言語理論と…

受け継ぐ記憶

どこかの新聞のコラムで、「おあむ物語」が紹介されていたので、久しぶりに、岩波文庫の『雑兵物語・おあむ物語』(1943年)を取り出してみました。 「雑兵物語」というのは、戦に出る雑兵たちの語りという体裁で、いわば戦いの「ハレ」の部分をしめしているの…

ただ見ているだけでなく

中野麻美さんの『労働ダンピング』(岩波新書)です。 現在の、非正規雇用の実態と、それが生み出されてきた背景を分析し、それに対しての発想の転換を呼びかけています。 「新自由主義に基づく政策との決別以外に、再チャレンジを可能にする労働と社会のシ…

ぜいたくな対話

加藤周一さんの『「日本文学史序説」補講』(かもがわ出版)です。 京都の市民の学習会、「白沙会」の人たちが、『日本文学史序説』をめぐって、加藤さんと勉強会を開いたときの記録をもとにしたもののようです。「白沙会」の人たちには、文学の専門家はいな…

しめつけ

本の話ではありませんが。 衆議院は本会議をひらいて、政府与党の出した教育基本法の「改正」案を可決して、参議院に送付したそうだ。 今回の、未履修騒ぎのときも、「決め事を守らないのは」という議論だけで、「決め事」自体の問題にはほとんどふれられな…

ホールデンとドロレス

タイトルどおり、ナボコフの「ロリータ」(若島正訳、新潮文庫)です。 ナボコフ作品は、「一ダース」をむかし読んだことがあるのですが、それ以来ということになります。1940年代後半のアメリカが描かれているわけで、そういう点では、当時の青少年の生態と…

速報的な感想として

文学フリマをめざして発行していた、日本民主主義文学会の代々木支部の雑誌、『クラルテ』が出ました。(発行責任者は北村隆志さん、kitamura@a.email.ne.jpです) 北村さんをはじめとして、浅尾大輔さんや紙屋高雪さん、特別寄稿として旭爪あかねさんなど、…

論理と感情と

杉浦明平の『暗い夜の記念に』(風媒社、1997年)です。 この本は、杉浦の戦時戦後の文章を集めて、1950年に自費出版したものの再刊本で、著者のあとがき、いくつかの注釈と、玉井五一による解説をつけたものです。彼は、立原道造と大学時代に同人誌をやって…

へりを回る

平野謙の『わが戦後文学史』(講談社、1969年)です。 タイトルから予測して、「党生活者」をめぐってのいわゆる〈論争〉などのはなしや、雑誌『近代文学』と『新日本文学』とのかかわりなどについての回想かと思ったら、そういう趣旨の話は最初のほうだけで…

紹介と論評

坪内祐三さんの『「近代日本文学」の誕生』(PHP新書)です。 『文学界』の巻末に、〈吾八〉という匿名で書いていたコラムの集積で、初めて本になって、坪内さんの著作であることが判明しました。 コラムですから、その号のちょうど100年前に何が起きたか…

格差の時代

前回の続きで、『モダニズムのニッポン』ですが、組み合わせる本は、岩瀬彰さんの、『「月給百円」サラリーマン』(講談社現代新書)です。 『モダニズム…』のほうが、いわば時代の最先端を取り扱っているのに対して、岩瀬さんのほうは、その前提となる、昭…

思い込みとは

橋爪紳也さんの『モダニズムのニッポン』(角川選書)です。 1920年代からアジア太平洋戦争がはじまるくらいまでの、いろいろなチラシやパンフレットなどを題材にして、当時の先端的な生活実態をあきらかにしようとしたエッセイ集です。 この本はなかなか考…

経験と構想

能島龍三さんの『分水嶺』(光陽出版社)が出ました。著者の最近の短編をあつめたものです。能島さんは、あの戦争が人間に与えた影響をいろいろな形の作品として追求している作家ですが、この作品集でも、そうした意欲が見られます。 自分の体験をベースにし…

刷り込みのこわさ

松木新さんの『アイヌを描いた文学』が刊行されました。札幌の文友社出版というところ(リンクなどは最後に載せます)から、ブックレットのようなサイズで出た小冊子です。 松木さんは、以前からアイヌ問題を描いた作品についての考察をしてきたのですが、こ…