2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

愛憎

藤田廣登さんの『時代の証言者 伊藤千代子』(学習の友社、2005年)です。 伊藤千代子(1905-1929)は、長野県諏訪の出身で、女学校時代は平林たい子と同年だったそうです。卒業後、紆余曲折はあったものの東京女子大に入学し、そこで後に野呂栄太郎の妻にな…

たくらみ

本の話ではありませんが。 東大阪市で市長選が行われています。市長を議会が不信任して、その結果、市長は辞職して選挙をやり直すということらしいのです。 似たような事例が、足立区でもかつてありましたが、そうしたまるで昔のチリのアジェンデ政権をつぶ…

方針をもつ

林廣茂さんの『幻の三中井百貨店』(晩聲社、2004年)です。 戦前、朝鮮と満洲に百貨店網を築いていた三中井の興隆と衰亡を探ったものです。植民地に商圏を広げたのは、そこで暮している日本人たちを主要な顧客としていたのですが、それだけでなく、朝鮮の上…

切実さ

三浦國雄さんの『風水講義』(文春新書、2006年)です。 研究者による概説本ですから、いわゆるハウツーものとはちがって、風水(特に墓地決め)の発想がどうなっているのかを説明しています。その点では、わかりやすい本ではないでしょう。 父祖の墓をどう…

会合

民主文学で活躍中の、旭爪あかねさんや浅尾大輔さんたちが中心になって、民主文学関係の40歳代以下の人たちを集めた集会がありました。 北海道から四国まで(九州は参加者がいなかったのです)から集まった30人くらいの参加者で、それぞれの作品の合評をした…

生活の中から

石母田正の『歴史と民族の発見』(平凡社ライブラリー、2003年、親本は1952年)です。 網野善彦が亡くなった後で、赤坂憲雄さんが『追悼記録 網野善彦』(洋泉社)を出したのですが、その中で、若いころの網野さんが、「国民的歴史学」の陣営からはずれたこ…

語るに落ちる

16日の朝日新聞に、大江健三郎さんの文章が載っています。 その中で、大江さんは、「日本のカトリックの女性作家が渡嘉敷島の戦跡碑に刻ませた文章」を引いています。 こんな文章だそうです。 「翌二八日敵の手に掛るよりは自らの手で自決する道を選んだ。一…

谷間

野間宏『志津子の行方』(河出新書、1955年7刷、初版は不詳)です。 野間が『人民文学』にかかわっていたころの作品集でしょう。旺文社文庫の年譜では、この本の収録作品では、「硝子」と「雪の下の声が……」が載っていて、いずれも1950年代初頭の作品でした…

そういえばそうなる

この前、『前衛』の古代史の鼎談についてふれたときに、古田武彦さんの九州王朝説をトンデモだというふうに言いました。 もちろん、中学時代に『失われた九州王朝』(朝日新聞社、1973年)を単行本で読んで感服していたわけですから、そうした、少しは関心を…

訓練し、新連句

柳瀬尚紀さんの『日本語は天才である』(新潮社)です。 柳瀬さんはごぞんじ『フィネガンズ・ウェイク』の翻訳をされた方で、そうした経験をもとに、日本語のいろいろな使い方について述べたものです。 その中で、〈七〉を「しち」と読むのか「なな」と読む…

能天気

内田隆三さんの『ベースボールの夢』(岩波新書)です。 アメリカ合衆国の統合にベースボールが果たした役割を、創造伝説にさかのぼって検証しています。イギリスのスポーツとは違うのだという意識が、ベースボールはアメリカ人の、よくいえばフロンティアス…

頭かくして

大石又七さんの『これだけは伝えておきたい ビキニ事件の表と裏』(かもがわ出版)です。 第五福竜丸で被爆した大石さんは、いまいろいろなところで被爆体験を語る活動をしています。この本の終わりに、そうした活動のリストがありますが、娘の通った学校も…

妄動はできない(ネタバレあり)

西野喜一さんの『裁判員制度の正体』(講談社現代新書)です。 西野さんは判事から法学の研究の世界に移ったかたで、裁判員制度を批判する立場からこの本を書いています。 人を裁くことのむずかしさを、専門的な訓練もないままにやることができるのかという…

別の側面

梶山季之(1930-1975)の『族譜・李朝残影』(岩波現代文庫)です。1960年代前半に書かれた二つの作品を中心として編まれたオリジナル編集版です。 作者は、日本の植民地だった朝鮮で生まれ育ったので、そこを舞台にした作品がこれです。作者の体験そのもの…

意外、でもない

平野謙の遺稿集(というより単行本未収録文集というほうが正確ですが)の、『わが文学的回想』(構想社、1981年)です。 彼の最晩年に社会問題化した宮本顕治の「スパイ査問事件」に関しての文書などが収められていて、小畑もスパイだったということを論証し…

ちょっと悲しい

『論座』の浅尾さんの論文です。 ひとつ、悲しいというとか、注文をつけたいところがあります。 70ページから71ページにかけてのところですが、浅尾さんはこう書いています。 「左翼の仲間には怒られるかもしれないが、いまの私には、実は、従軍慰安婦問題も…

店先

浅尾大輔さんが『論座』に論文を書いたというので、朝日新聞にも広告が出ていました。 そこで、帰りがけに近所の本屋ででも購入しようと思って、(子どもたちに夕食をつくらなければならないので)ターミナル駅の近くの本屋には寄らずに、最寄り駅の駅前の本…