2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

原動力

『人類と機械の歴史 増補版』(リリー著、伊藤新一、小林秋男、鎮目恭夫訳、岩波書店、1968年、原著は1965年)です。 著者(1914-1987)はケンブリッジに学んだ、イギリスの科学史家のひとだそうです。原著の初版は戦後まもなく出版され、日本語訳も岩波新書…

伝統回帰

原田信男さんの『江戸の料理史』(中公新書、1989年)です。 江戸時代の料理に関する本を取り上げながら、そこに見える料理状況をとらえるものです。もちろん、そうした料理を楽しめる階層は、江戸のような都会に住んでいる一握りのひとたちだけで、地方のひ…

媒体

『中国古典文学大系49 海上花列伝』(太田辰夫訳、平凡社、1969年)です。 原書は1892年から書かれた作品で、最初は作者、韓邦慶の個人雑誌、『海上奇書』に連載されました。当時の上海の芸者の世界を舞台にして、そこに出入りする男たちや、そこに寄生して…

縛り

今年のセンター試験、小説は小池昌代さんの「石を愛でる人」でした。 どうみても最近の作品で、このところの牧野信一や岡本かの子のような著作権の切れた人ではない方を選んだのも、作品世界を現在に近づけようという意図があったのだろうとは思います。 た…

地の底から

小縄龍一さんが亡くなられました。 夕張の炭鉱で働いていて、閉山になったので札幌にでてこられたのでしょうか。炭鉱の生活に材をとった小説をいくつか書かれていました。 先年には宍戸律さんも亡くなられていますので、北海道の炭鉱を舞台にした作品の書き…

西は西

岩波文庫『川端康成随筆集』(2013年)です。 ノーベル賞講演の「美しい日本の私」など、著者のエッセイや、横光利一への弔辞のような知友を悼む文章などが収められています。 戦後の川端が、日本回帰ともいうべきこころを一貫して持ち続けていたことがそれ…

推敲

週刊文春の広告を見ていたら、綿矢りささんの結婚をめぐる手記が載っているようです。タイトルが、『私の背中を押した彼の一言』だそうです。 「推す」と「敲く」とのどちらがいいかを悩んだ唐の詩人の故事から、推敲ということばが生まれたそうですが、綿矢…

一寸の虫

岩波文庫『江戸端唄集』(倉田喜弘編、2014年)です。 三味線を弾きながらの小唄というべきものを集めたものですが、作成は明治にもかかっていて、〈散切り頭をたたいてみれば〉の唄があったり、鹿鳴館を扱ったようなものもあったりと、こういうものにも、世…