抜けている

小野俊太郎さんの『明治百年』(青草出版)です。
1968年のあれこれをさぐったもので、小熊英二さんの『1968』から抜け落ちた当時の生活のさまざまなスタイルを考えようとしています。それは、いまに続く社会のシステムが構築され始めた時期だというのです。
いわゆる学生運動に収斂させるわけにはいかないのはもちろんですが、それでもこぼれ落ちるものはあるようです。減反政策がはじまった農村のすがたは、小野さんの視野にははいらないようです。
書いてないことをあれこれいっても仕方がないのでしょうが、だからこそ、そのこぼれた部分を、語っていかなければならないのでしょう。工場ではたらく労働者の立場や、都会に出稼ぎにでる農村のひとびとのありさま、そうした生活のひとこまを、語り、書いていかなければならないのではないでしょうか。
当時を生きた人びとの、そうした観点からの表現は、もっとされるべきでしょう。