2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

走りながら

『アメリカの黒人演説集』(荒このみ編訳、岩波文庫、2008年)です。 オバマさんが大統領に選出される前に企画された本ですが、〈イリノイ州選出のオバマ上院議員〉の演説も収録されています。 19世紀の奴隷制度が生きていた時代のは、奴隷からの解放を、そ…

壁にむかう

村上春樹さんの演説が、『週刊朝日』3月6日号に、原賀真紀子さんの訳で載っています。 これに関しては、斎藤美奈子さんが、2月25日の『朝日新聞』の文芸時評で言及していますが、「総論というのはなべてかっこいい」という言い方をしています。こういうとき…

エキストラ

先週のつづきの、マンガ家の西本さんの『蟹工船』撮影現場レポートです。 西本さんの役柄は、缶詰づくりのために、原料のカニを流すコンベアを動かすハンドルを回す係でした。西本さんは、ひょっとしたら、本物のカニが流れるのではないかと期待したようです…

若気のいたり

今週号の『週刊ベースボール』の、豊田泰光さんのコラムは、田村大五さんの追悼です。豊田さんと田村さんは、ほぼ同時(昭和10年の早生まれ)に生まれていたのだそうで、そうした世代的な共有感を抱いていたのだということです。 そこで初めて知ったのですが…

あやふやな話

河出の世界文学全集のポール・ニザン『アデン、アラビア』(小野正嗣訳、2008年)です。 狭い世界から脱出しようとする主人公の心境を描いた作品で、彼が、パリでの生活で窒息しそうになっている状況がよく描かれています。 ところで、実は以前、ある人から…

古くする

『隋唐帝国と古代朝鮮』(礪波護、武田幸男著、中公文庫、2008年、親本は1997年)です。 「世界の歴史」のシリーズの中の一冊です。礪波さんが中国の部分を、武田さんが朝鮮の部分を執筆しています。 さて、朝鮮半島の歴史は、半ば伝説の「古朝鮮」という時…

こういうところも

『週刊少年マガジン』(講談社)は、毎週水曜日の発売なのですが、その中に、西本英雄さんの「もう、しませんから。」という突撃レポートがあります。 これは、西本さんが、編集者やほかのマンガ家さんたちと、いろいろなところに出かけていって、さまざまな…

節目

田村大五さんが亡くなられた。 といっても、ご存じない方も多いでしょうが、長年ベースボールマガジン社の要職をつとめられた方で、1950年代以来のプロ野球記者であった方です。「大道文」の筆名での著作も多く、『プロ野球人国記』(前後3回出版されていま…

転化

三浦國雄さん訳注の『「朱子語類」抄』(講談社学術文庫、2008年、親本は1976年)です。 朱子学というと、寛政異学の禁のように、権力と一体化したというイメージもあるのですが、この、弟子が筆録した朱子の言動には、ひとつの学問的体系をたてようとする気…

大事な仕事

佐藤三郎さんのブログに、彼が以前書いた、『党生活者』に関する考証がアップされています。 たしか最初は民主主義文学会の支部誌に載せたものだったと思い出して、調べてみると、『民主文学』2000年11月号の「サークル誌評」に記述がありました。 それによ…

積極的な関心

山内昌之さんの『近代イスラームの挑戦』(中公文庫、2008年、親本は1996年)です。 中公文庫で、「世界の歴史」のシリーズが出だしたので買ってみたのですが、世界史といえば、受験のとき以来あまり本格的には勉強していなかったので、この本に出ているよう…

世界観

今月の『民主文学』には、読みどころも多いのですが、その中から、ひとつ。 三浦健治さんが遠藤周作についての長編評論の連載を始めました。遠藤周作はご存知のように、カトリックの信者であり、なおかつ、『沈黙』や『深い河』のように、カトリックの教義通…

ヒント

川上武『流離の革命家』(勁草書房、1976年)です。 東京帝国大学助教授からドイツに留学、そこで「左傾」して、ソ連に亡命、スターリンの犠牲になった、国崎定洞(1894−1937)の生涯を、いろいろな人への聞き書きや、資料を使って追跡したものです。 国崎は…

意図とねらい

この間、2回にわたって、アジア・アフリカ作家会議日本評議会の動きを追ってきたのですが、実際、北京の影響を受けたほうは、その後の動きがはっきりしません。文化大革命の時期には、北京はいろいろな国の運動にちょっかいを出して、次々と自分の意に沿う集…

よい材料

『日本鉄道旅行地図帳』(今尾恵介監修、新潮社)です。 まだ刊行中で、完結していないのですが、全12冊と別冊とで、日本列島と旧植民地がカバーできるという形になるようです。 きちんとした縮尺で、現在ある鉄道線と、過去の廃線とが、地図上に描かれてい…

切断(続き)

『堀田善衛 上海日記』(集英社、2008年)の巻末についていた堀田の年譜と、そのほかみているうちに、少しわかってきたこともあるので、前回の続きです。 (今回も、敬称略でいきます) 前史として、1964年に、新日本文学会は江口渙・霜多正次・西野辰吉・津…

切断

(ちょっと人名が多く出てくるので、今回は敬称略でいきます) 『戦後文学とアジア』(毎日新聞社、1978年)です。 この本は、「日本アジア・アフリカ作家会議」が、1978年6月から7月にかけておこなった連続講座の記録だそうです。大岡昇平を大江健三郎が、…

復刊

毎年恒例の岩波文庫の復刊の季節になりました。 注文促進用のひとくち紹介ののったリーフレットがいつも出ていて、そこには、前回の重版がいつだったかが載っています。 今回の復刊では、いちばん古いのが、1987年以来の重版になるロシアの作家アクサーコフ…

わかったようなわからないような

小林誠さんの『消えた反物質』(講談社ブルーバックス、1997年)と、益川敏英さんの『現代の物質観とアインシュタインの夢』(岩波科学ライブラリー、1995年)です。 もちろん、今回のノーベル賞受賞を機に重版がかかったもので、小林さんのほうは3刷、益川…