2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

世襲

大津透さんの、『道長と宮廷社会』(講談社学術文庫、日本の歴史シリーズ、親本は2001年)です。 道長と一条天皇のつくりあげた、10世紀末から11世紀初頭の時代の政治状況なのですが、人を得ると、けっこう公卿の合議制は機能するものですし、(公卿の人数を…

臍下丹田

ちくま学芸文庫の『ニーダム・コレクション』(牛山輝代編訳)です。 ニーダムといえば、中国科学史研究での業績はよく知られていますが、この本では、どちらかというと、一般の人向けに書かれたり、講演されたりしたものを集めているような印象があります。…

ならう

藤田昌士さんの『学校教育と愛国心』(学習の友社、2008年)です。 近代日本の教育において、『愛国心』がどのように教えられていったのかを、教科書や副読本のたぐい、最近の『心のノート』にいたるまで、あとづけたものです。 先住民族としてのアイヌの欠…

言ってはいない

なにやら、各地の知事さんやら市長さんやらが、国政に物申すとかアクションをおこすような感じです。 前から気になっていたのですが、そういう人たちは、〈地方分権〉とかいうのですが、日本国憲法にしっかりと章立てされている『地方自治』ということばを使…

めぐりあい

このところ、パレスチナ関係のものを多く読んでいるのですが、パレスチナの作家、ガッサーン・カナファーニー(1936−1972)の、『ハイファに戻って・太陽の男たち』(河出書房新社の新装版、元版は1978年)が印象に残ります。 作者は、パレスチナにうまれ、…

無事だろうか

この、「はてな」のブログには、管理メニューとして、アクセス解析の機能がついています。このブログを開設してしばらくの間、テヘランからのアクセスが、けっこう定期的にありました。 最近はないようなのですが、どうしているのでしょうか。 このところの…

ここにも傍証

川口浩(1905−1984)『文学運動の中に生きて』(中央大学出版部、1971年)です。 著者はプロレタリア文学運動のなかで、評論や外国の文学動向を翻訳して紹介するという仕事を主にしていて、戦時中から戦後にかけては、日大や中大で教えていた方です。岩波文…

ここから始まる

佐藤貴美子さんの『われら青春の時』(新日本出版社)です。 1950年代初め、名古屋市南部に民主診療所をつくった人たちの物語です。 佐藤さんは、こうした物語を書くのが得意で、今回も、当時の医学生や新米のお医者さん、受け入れる村のひとたちと、それぞ…

立ち位置

水曜の夜、NHK総合での太宰の番組を、見るともなく見ていたのですが、昭和初期の小説家の活躍を述べるところで、画面に出てきた雑誌が『キング』や『現代』だったのには、変な感じがしました。やはりここは『新潮』や『改造』『中央公論』を出すべきところで…

取り合わせ

『東欧SF傑作集』(創元SF文庫、1980年)です。 東京創元社は、ほかにも『ロシア・ソビエトSF傑作集』も同じ文庫から出していて、ブルガーコフの「運命の卵」も含まれているのですが、こちらの東欧編は、ポーランドやブルガリア、チェコやルーマニアなどの作…

今だからこそ

山本太郎さんの『新型インフルエンザ』(岩波新書、2006年)です。 過去にも、1918年、1957年、1967年とパンデミックがあったのですが、この本では、そのときのことにも触れられています。 とくに、1918年のいわゆる〈スペインかぜ〉のときには、第一波より…

今からみれば

エレンブルグ『雪どけ』(小笠原豊樹訳、河出世界文学全集、1965年、原作は1955年)です。 タイトルが流行語になってしまったのですが、作品は、ロシアの地方都市を舞台に、工場で起きている新しい動きと、画家がどのような姿勢で創作に向かうのかを、兄妹(…

傷あと

『しんぶん赤旗』に、新船海三郎さんが、終戦をはさんだ時期に書かれた時代小説について書いています。扱われた時代は幕末維新の頃ですが、そこに、当時の状況への批評があるというのです。 考えてみれば、坪内逍遥の「当世書生気質」は、上野の戦争で離散し…

あとづけ

野崎充彦さんの『朝鮮の物語』(大修館書店あじあぶっくす、1998年)です。 朝鮮半島に伝わるいろいろな伝承や物語の概説書なのですが、日本や中国の昔話と類似するものや、遠くヨーロッパに関連するものなど、話題は豊富です。 今の韓流ドラマで、「朱蒙」…

鉄分の話ではないですが

『すばる』7月号の話の続きです。 小野正嗣さんが、岡真理さんにインタビューしています。その中で、文学は『役に立ってはいけない』という考え方が出ています。岡さんの、『アラブ、祈りとしての文学』(みすず書房、2008年)は、書棚においてあるのですが…

鉄分

『すばる』7月号には、原武史・森まゆみ両氏の対談と、川本三郎さんのエッセイが載っています。それぞれの立場からの論考ですが、川本さんは松本清張の『砂の器』を題材にして、対談は森さんの『女三人のシベリア鉄道』を素材にしています。 このところ、新…

目の前のこと

中村政則さんの『労働者と農民』(小学館ライブラリー、1998年、親本は1976年)です。 近代日本の資本主義発展の暗部ともいうべき、労働者や農民からの搾取のありようと、それに対するたたかいを、当事者からの聞き取りも交えて、構成したものです。 製糸業…

保存と管理

『明治社会主義史論』(青木文庫、1955年)です。 1907年から1908年にかけて書かれた、石川三四郎「日本社会主義史」山路愛山「現時の社会問題及び社会主義者」安部磯雄「社会主義小史」の3篇を収録したアンソロジーです。 当事者の回想という趣きのあう石川…

風土とまでは

この前「マサ」さんからいただいたコメントにあった、NHK教育テレビの日本と朝鮮半島との関係の番組をみてみました。 かつての百済の地に、倭国ふうの前方後円墳がいくつか築造されているというのです。その映像がでたのですが、日本で古墳といえば、緑の島…