2014-01-01から1ヶ月間の記事一覧

遺されるもの

鬼藤千春さんの小説集『磯の光景』(私家版)です。 鬼藤さんは岡山県で文学運動の中心にいらっしゃる方で、この本にも、支部誌『まがね』に掲載した作品も多く収められています。 岡山県を舞台にした彼の作品には、その土地に生きてきた人たちのすがたが浮…

やられたこと

莫言『続 赤い高粱』(井口晃訳、岩波現代文庫、2013年、親本は1990年、原著は1987年)です。 抗日戦争時代の山東省を舞台にした作品で、話者〈わたし〉(作者と同年代のようです)の祖父母や父親が当時をどのように生きたのかを描くものです。 当然、日本軍…

先端

桜井博儀さんの『元素はどうしてできたのか』(PHPサイエンスワールド新書、2013年)です。 ビッグバンからの元素の生成や、93番以上の人工元素の合成はどうするのかなど、最新の情報も出しながら、原子や元素にかんして述べています。 そのなかの最後のほう…

節約

今年のセンター試験の文章についてです。 評論の齋藤希史さんの本に関しては、このブログの2007年4月18日づけで、紹介しています。おもしろいものを探してきたのかなとも思うのですが、題材のなじみにこだわると、けっこう厳しいのかもしれません。 小説は岡…

外から

大城立裕さんの『朝、上海に立ちつくす』(中公文庫、1988年、親本は1983年)です。 大城さんは、上海にあった東亜同文書院大学に進学し、予科生のときに入営し、終戦を迎えます。そのときの経験をもとに書いた小説で、作中の主人公、知名も、1943年に予科に…

移転

内海繁(1909−1986)の『播州平野にて』(未来社、1983年)です。 著者はながく姫路で文化運動をやってきた人で、その経験にもとづく文章を集めたものです。〈ふるさと〉の顕彰が、限られたものになっていること(相生がうんだ偉人として大山郁夫が語られる…

創立以来

宮寺清一さんが亡くなられました。宮寺さんは、リアリズム研究会に参加してからずっと、民主主義文学運動の担い手として活動して、文学同盟創立からの同盟員でもありました。 労働現場のありようを描く作品を追求して、1980年代の労働戦線の再編期のなかでの…

持続

増田勝さんの『茜色にそめて』(私家版、2013年)です。 増田さんは、長く名古屋の民主主義文学運動の中心を担ってきた方です。この作品集にも、『名古屋民主文学』に掲載された作品が多く収められています。 労働者の生活をしながら文学にこころざすのは、…

天地のリズム

佐伯一麦さんの『月を見あげて』(河北新報出版センター、2013年)です。 仙台の新聞『河北新報』紙に掲載したエッセイを集めたものです。2010年の秋から連載をはじめたようで、今回まとめられたのは2012年の春までの分です。 佐伯さんは、旧暦の月の動きを…