2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

大義名分

日本思想大系『頼山陽』(岩波書店、1977年)です。 山陽が死の直前まで推敲を重ねた「日本政記」を全文書き下し文にして収録してあります。これは、「日本外史」が、武家のたたかいを物語風に描いたのに対して、神武天皇から豊臣秀吉の死までを編年体にまと…

描写の力

井伏鱒二『珍品堂主人』(中公文庫、1977年、親本は1959年)です。 学校の先生だった男が、骨董にのめりこみ、骨董屋になる。その中で知りあった男の援助で料亭を開業し、そこそこ繁盛するが、奸計にはめられ、経営から追われる、というのが主筋の話ですが、…

のどもと過ぎれば

中島三千男さんの『天皇の代替りと国民』(青木書店、1990年)です。 もともとは、大正から昭和への代替りの時の、死去と即位との事例の研究を中心にして、1988年に出版企画がたてられたようなのですが、進行中に昭和天皇の病状悪化からはじまったできごとの…

宝の山

固定資産税は私の住んでいる政令市では、市役所から課税の案内がきます。ですので、市町村税だと認識していました。けれども、この前、ちょっと事情があって、東京のある区役所にいって、固定資産税関係の問い合わせはどこの窓口かときいたら、それは都税事…

反知性

『文学界』7月号は、「反知性主義」に陥らないための必読書50冊、という特集を組んでいます。その中で最初に取り上げられているのが、〈日本国憲法〉で、書家の石川九楊さんが書いています。石川さんは、憲法の前文を取り上げ、「国会の開会時と閣議の前には…

権利と責任

谷崎潤一郎『細雪』(新潮文庫全3冊、1968年改版、親本は1946年から48年にかけて刊行)です。 大阪の旧家にうまれた4姉妹の、1930年代後半の時期を描いた作品です。上のふたりはすでに結婚していて、下の二人がどういう縁をむすんでいくのかが、作品の中心に…