2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

時系列

新潮社の『日本鉄道旅行地図帳』の最新刊、「乗りつぶしノート」の第2弾が出ました。この間の最新状況に対応したもので、常磐線や大船渡線の不通区間が明記されたり、九州新幹線のルートや駅が記されたりしています。 けれども、地図だけなので、いつ、どの…

ころがす

岩波文庫『白楽天詩選』(全2冊、川合康三訳注、2011年)です。 日本人は漢文を訓読するという、外国語受容としては変わったかたちのうけいれかたをしてきました。それが漢詩の場合、特に詩吟というかたちで、語調を重んじるものになっていきます。 しかし実…

道のり

風見梢太郎さんの『海蝕台地』(ケイ・アイ・メディア)です。 10年くらい前に『女性のひろば』誌に連載された作品ですが、今回本になりました。ある大きな通信会社の研究所で、思想差別を受けながらも屈しないで研究をつづける主人公が登場します。その中に…

ひと山越えて

林田遼子さんの『風綿』(本の泉社)です。 作者が中学を卒業して勤務した紡績会社のこと、夫と不和になって自立をめざした働いたこと、心を病んだ妹とのこと、と作者の生活に取材した作品をあつめた短編集です。特に、妹の発病と死を描いた作品が、兄夫婦と…

残念なことに

いわき市だかの製紙工場で、再生紙をつくるために故紙を溶かすかまに、労働者が落ちて亡くなったとか。 葉山嘉樹の「セメント樽の中の手紙」を思い出してしまいました。こうした災害をなくすための努力はどうだったのでしょうか。

手を下す

ケーブルを契約しているので、〈日本映画専門チャンネル〉を視聴することができるのですが、最近の『蟹工船』をやっとみることができました。といっても、時間を調整しそこねて、最初のほうは見られなかった(松田龍平の演じる人物がロシア船に救出されると…

世代

絲屋寿雄『自由民権の先駆者』(大月書店、1981年)です。 大逆事件で死刑にされた奥宮健之の生涯を追ったものです。奥宮は、1857年生まれなので、幸徳秋水より14歳年上ということになります。ですから、キャリアも長く、国会開設が決まった直後から自由党で…

封印

申京淑さんの『母をお願い』(安宇植訳、集英社文庫、2011年、原本は2008年)です。 ソウルにやってきた老夫婦が、地下鉄の駅ではぐれ、妻が行方不明になります。その娘・息子・夫などの視点から、母や妻をめぐっての記憶がよみがえり、自分たちの半生をふり…

ことばのゆれ

笠松宏至さんの『法と言葉の中世史』(平凡社ライブラリー)です。 中世の文書に出てくることばの使い方をめぐって、そこに流れるひとびとの意識をさぐります。 文書が残っていてこそのものですが、それを分析する手並みに感嘆します。 歴史学の深さも考えさせ…

わかりやすさ

村上龍さんが以前『新潮』に書いた「キャンピングカー」という作品がありました。定年退職後は妻とキャンピングカーに乗って全国を旅したいと考えていた主人公が、妻から拒否され、再就職を試みるも、営業一筋で生きてきた主人公を営業職として受け入れる会…

交友

『文學界』8月号に、高澤秀次さんが「近代女性文学の百年」という論考を載せています。樋口一葉・岡本かの子・宮本百合子・野上弥生子を中心に取り上げています。なかでも、百合子と弥生子に焦点があたっているように見えました。ちょっと前にも、岩橋邦枝さ…

棄民

『北朝鮮へのエクソダス』(テッサ・モーリス-スズキ著、田代泰子訳、朝日文庫、2011年、親本は2007年)です。 1950年代末から行われた北朝鮮への〈帰還事業〉に関して、日本政府の中に〈厄介払い〉をしたいと思っていた向きがあって、それがこの事業を後押…

地名

森浩一さんの『萬葉集に歴史を読む』(ちくま学芸文庫書き下ろし、2011年)です。 万葉集の歌を史料としてとらえようとするもので、歴史書からこぼれそうなものをいろいろと引きあげています。 そこであらためて思うのですが、歌の中に出てくる地名も、つい…

仕事の内容

伊井直行さんの『さして重要でない一日』(講談社文芸文庫)です。 表題作は1989年、併収の「星の見えない夜」は1991年の作品です。 いずれも、伊井さんのいう〈会社員小説〉にあたるもので、会社内の人間模様をえがくことを主眼にしています。伊井さんのい…

言っているのか

谷崎潤一郎『文章読本』(中公文庫、改版1996年、原本1934年)です。 中学のとき、旺文社文庫版を授業のテキストで使ったのですが、それ以来の再読となりました。 けれども、文章について何か言うというよりも、谷崎自身のことばに対する感覚の鋭さのほうに…