2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

こんな話だったかな

話題の、ドラマ「坂の上の雲」第1話です。 本木雅弘さんの演じる秋山真之に焦点があたっているようで、そのほうがドラマを作りやすいのかもしれませんが、それが単純な青春群像になってしまうのでは、視点が単純化されてしまうかもしれません。 さて、今回の…

何のため

政府与党がやっている、〈事業仕分け〉とやらで、いわゆる〈思いやり予算〉が議題にのぼったそうです。 ところが、その内容は、基地で働く日本人労働者の賃金を切り下げようということになるようなのです。なんでも、基地労働者の賃金は、周辺の労働者よりも…

疲弊

九州場所の映像をみると、桟敷席がガラガラで、いったいどうしたのかと思うようです。福岡の本場所は1957年からで、名古屋場所よりも早かったのですが、それには、当時の九州地方がもっていた〈元気さ〉が大きな要因であったのでしょう。西鉄ライオンズの強…

利用のしかた

森浩一さんの『日本の深層文化』(ちくま新書)です。 アワ・シカ・イノシシ・クジラと、日本人の身近にありながら、実はよく知られていないものについて考えようという試みのものです。 とくに、シカやイノシシを、狩猟の対象で、食肉にしたという単純な理…

調査の結果

成澤栄寿さんの『島崎藤村『破戒』を歩く』の下巻、『「藤村」を歩く』(部落問題研究所)がでました。 上巻のときにも紹介しました(2008年8月30日です)が、徹底した調査は相変わらずで、パリにも行って現地取材をしています。藤村の生涯が、よくわかるも…

生命感

森蘊(1905−1988)さんの『日本庭園史話』(NHKブックス、1981年)です。奈良時代から江戸期にかけての、日本の庭園をあとづけたもので、実測をしながら庭園の状況を復元してきた著者の研究を、一般向けにまとめたといえます。カラー写真の図版で、平泉の毛…

知らずにはすまない

新潮社の『日本鉄道旅行地図帳』の、〈朝鮮・台湾〉編と、〈満洲・樺太〉編が出ました。 もちろん、1945年8月15日以前の情報による地図ですから、資料もそこを基盤にしています。台湾には製糖会社の輸送用の路線が多いとか、朝鮮では北部のほうに会社の専用…

あとでつながる

ウィキペディアをなんとなく見ていたら、今日はプルーストの死んだ日だそうです。 『失われた時を求めて』は、ちくま文庫(井上究一郎訳、1992年から93年)でやっと読んだのですが、ドレフュス事件はでてくるわ、第一次世界大戦への批判的言及はあるわと、予…

バランスの上に

四手井綱英さんの『もりやはやし』(ちくま学芸文庫、親本は1974年)です。 1972年に書いた連載をもとにしてできた本だということです。 1970年代ならば、まだ自然環境は、ふるいものとあたらしいものとが、せめぎあっていたともいえるでしょうか。けれども…

頭上の蝿

ギュンター・グラス『ドイツ統一問題について』(高本研一訳、中央公論社、1990年、原本は1990年)です。 ベルリンの壁が〈崩壊〉(人びとの努力でこわしたものを崩壊というのには抵抗がなくはないのですが)したあと、統一が叫ばれた頃の、グラスさんの意見…

衝突

『パプア・ニューギニア小説集』(塚本晃久訳、三重大学出版会、2008年、原著は1976年)です。 1970年代前半に書かれた(英語で)作品を3作(それぞれ作者はちがいます)集めたものです。原著の〈著者紹介〉によれば、作者は1950年前後に生まれた当時の若手…

おまけつき

荻野富士夫さんの編集で、『小林多喜二の手紙』が岩波文庫からでました。 もう、どなたかが書いていらっしゃるかもしれませんが、この本、興味深いおまけがついています。 多喜二宛の現存する(公表されたが現物は残っていないものも含めて)書簡、伊藤信二…

消えゆく技術

『群像』の話ですが、この12月号まで、活版印刷だったのだそうです。そういわれてみると、たしかに、手ざわりが、ほかの雑誌とちがっていました。言われるまで気づかないというのもなんですが。 来年の1月号から、これも電子製版に移行するとかいうので、活…

微妙なずらし

高橋源一郎さんが『群像』に「日本文学盛衰史」を連載しています。戦後文学編ということで、この12月号には、『1946・文学的考察』を材料にしています。 登場するのは、その本を読もうとする21世紀の学生で、まず最初の加藤周一の「新しき星菫派に就いて…

まなざし

浅尾大輔さんの『ブルーシート』(朝日新聞出版)です。 『民主文学』から2作、『新潮』『小説トリッパー』から1作ずつ集めた、小説集です。 作品の舞台も、彼の故郷の東三河から2作、東京から2作と、浅尾さんの視点がみえるものになっています。いくつかの…

リスクを受容する

大熊孝さんの『洪水と治水の河川史』(増補版、平凡社ライブラリー、2007年、親本は1988年)です。 水害を防ぐといっても、限界がある以上、ある程度の〈洪水〉は受け入れるような社会を作っていくべきではないかという問題提起を、江戸時代の治水の理論(『…

つくる・ひろげる

松竹伸幸さんの『レーニン最後の模索』(大月書店)です。 ロシア10月革命のころからの、ソビエト政権のなかで、レーニンが何を考えて経済政策を行ってきたのかを追究したものです。 革命の直後には、レーニンは、社会主義は生産物の分配方法の改善で実現で…

本音かな

たまたま、NHKにチャンネルを回したら、この間の政権交代に触発されたような番組の、この15年ばかりの政治をふりかえるものをやっていました。そこで、小沢一郎さんがいいます。 「主権者国民が唯一意思表示できるのが選挙だから」 請願や陳情や、そうした運…

それだけではないのだが

『心をつなぐ左翼の言葉』(かもがわ出版)です。 辻井喬さんに浅尾大輔さんがロングインタビューをしたもので、いちおう、奥付の著者名は、辻井・浅尾のおふたりが同列で書かれています。意見の相違があっても、大きな目標のために連帯するということは大事…

忘れてはいけない

李浩哲(イ・ホチョル)さんの『板門店』(姜尚求訳、作品社)です。 1950年代から2000年あたりまでの、作者の短編を集めたものです。 作者は、現在は北朝鮮のエリアにある、元山に育ち、朝鮮戦争のときに、従軍してその結果、韓国に住むようになった作家で…