2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

この時期

村上春樹さんの『1Q84』(新潮社)です。ネタバレがありますので、いやなかたはご遠慮ください。 なぜ、1984年なんだろうか、ということが、ひとつの問題かもしれません。というのは、時事的なことが出てこないからです。といっても、そうしたものが出てこな…

隠すより

箸墓古墳の築造年代が特定できそうだというニュースが流れています。 実際には、宮内庁が管理しているので、古墳そのものを発掘することはできないのですが、出土した土器などの分析をしたそうです。 実際、大和盆地に位置した権力が、列島を支配していった…

シンボリック

『李商隠詩選』(川合康三選訳、岩波文庫、2008年)です。 中国の文語文学には、虚構のにおいが乏しいといったのは確か吉川幸次郎でしたが、李商隠(811-858)は、そうした中では、象徴的な詩を書いています。 逆に、そこが読者を選ぶ要素もあるようで、少し…

スケール

佐々木譲さんの『わが夕張 わがエトロフ』(北海道新聞社、2008年)です。 津軽海峡を越えたのは3回しかなく、岩見沢より奥にはいったことがないので、北海道の大きさはなかなか実感できないのですが、逆のこともあるようで、佐々木さんが、織田信長を書こう…

タイミング

『文藝別冊 太宰治』(河出書房新社)です。 といっても、浅尾大輔さんが書いているというので、それと、小野才八郎さんのインタビューだけですが。 浅尾さんの論考は、太宰治を痛打した宮本顕治の論立てを批判し、今の時代に、社会にあらがおうとする人びと…

印象度

滝平二郎さんが亡くなられました。 子どものころ、多くの絵本などでよく作品をみていたので、文章を書いていた方のことはまるっきり覚えていないのですが、絵のほうの記憶は、けっこう今も鮮明です。 『八郎』とか、『ベロ出しチョンマ』の絵も、そうでした…

めざすもの

蓮池透さんの『拉致』(かもがわ出版)です。 111ページの小さな本ではありますが、拉致問題の解決をどうみるかについての、考えるべき論点が出ています。 その、重さを、きちんと感じなければいけませんね。

町と鉄道

ちょっとみもふたもないタイトルですが、吉開那津子さんの『夢と修羅』全3冊(本の泉社)です。ちょうど、『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社)の九州編がでたので、それとてらしあわせると、いろいろと考えてしまいます。 吉開さんの作品は、1911年に九州筑後…

差をつける

『生活の中の植民地主義』(人文書院、2004年)です。 京都大学人文科学研究所の2002年の夏期公開講座をもとにしたものだそうですが、岩波新書で『創氏改名』を書いた、水野直樹さんが中心になっています。 その水野さんの論考では、植民地朝鮮では、最初は…

広がり

田中彰さんの『明治維新の敗者と勝者』(NHKブックス、1980年)です。 NHK出版は、大河ドラマと連動して、けっこう地道な研究者の本を、安価に出すことがあります。北条時宗の時には村井章介さんだったり、義経のときには保立道久さんとかが、NHKブックスで…

役目をはたす

近所の古書店に、少し本を売りにいきました。 いわゆる新古書店では引き取ってくれないようなものばかりなので、「日本の古本屋」サイトにも参加している店が、少し近くにあるので、自転車にひとやま積んで、ときどきもっていっています。なので、その店には…

どうというわけでもないが

島田雅彦さんの、『徒然王子』の第二部(朝日新聞出版)が出ました。 王家最後の男子(祖父に当たる方が戦時中疎開していたり、伯父さんがいらっしゃるところを考えると、実在の系譜にあてはめてみたくもなりますが、それは別のこととして)、テツヒト王子の…

格差の根拠

樋口隆康『古代中国を発掘する』(新潮選書、1975年)です。 当時発掘された、馬王堆や、満城という、前漢時代の陵墓の発掘結果の報告です。 そこには、当時の支配層が、いかに豪華な副葬品をつくらせたのかがみえてきます。とくに、満城は、漢王朝の一族、…

うらにあるもの

前回書いた、大西さんの本を探して、本棚の奥をあけてみていたら、『昭和史の瞬間』(朝日新聞社、1966年)を見つけました。 こどものころ、家にあったもので、自分のわかる範囲のところをよく読んでいた記憶があります。 『朝日ジャーナル』誌に連載された…

正当化

この前、宮本・大西論争について少し書きましたが、本棚の奥から、大西巨人さんの『新生』(みすず書房、1996年)を出して、少し見直してみました。 大西さんの、宮本さんへの反論「青血は化して原上の草となるか」(初出は『新日本文学』1954年4月・5月号)…

残骸

娘の通っている大学に、「奉安殿」として使われていた建物が現存していると、どこかで聞きこんだので、今回、構内にはいることができた機会に、それを見ました。 戦前からの学校なので、古い建物もあって、文化財として保存されているものもあるのですが、そ…

利便性

『中世のパン』(フランソワーズ・デポルト、見崎恵子訳、白水社Uブックス、2004年、原本は1987年、親本は1992年)です。 フランスでは、15世紀あたりから、パンは自分の家で焼くのではなくて、専門のパン屋さんがあったというのです。 彼我の比較というわけ…

意地

小原芳樹さんの訃報が、新聞に載っていました。 小原さんは、鳥取で民主主義文学運動を長くやっておられて、『民主文学』にも、いくつかの作品が掲載されています。そのほとんどが、日本と朝鮮半島との関係についての作品で、最近でも、2008年の11月号に、「…