2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

障壁

右文書院から出ている金石範さんのインタビュー、『金石範《火山島》小説世界を語る』(2010年)です。 金さんの小説をめぐって、興味深い話が展開されていて、小説の方法や、事実や体験と文学との関係などの話題が展開されています。 体験していなかったか…

地名

井上ひさし『新釈遠野物語』(新潮文庫、2003年改版、親本は筑摩書房から1976年)です。 井上さんが亡くなって、そろそろ1年になろうとしていますが、今の東北を見たら、どう感じられるでしょう。この本でも主人公は東京の大学を休学して、釜石で酒場をやっ…

かたち

原武史さんの『鉄道ひとつばなし』3(講談社現代新書)です。 近現代史と鉄道を結びつけるのが彼の得意なのですが、こうした短文コラム集にも、そうした流れは発揮されています。東大合格者数の変動に、鉄道の開通が劇的に関係した例として、西日暮里の存在…

責任の所在

前から言っているのですが、原子力発電が消えた場合の日本の電力供給量は、ほぼバブル直前の1985年のレベルに同じなのです。それは逆に、この25年間で、わたしたちは1.5倍の電力を使ってきたということになるのですが、1985年のレベルを再考することも大切で…

情報操作

1923年の大正関東地震の際の、●●●●に関するデマのことですが、こういう文献を見つけました。 村山知義の『演劇的自叙伝』2(東邦出版社、1971年)が引用している、江口渙の「関東大震災と社会主義者・朝鮮人の大量虐殺」という文章です。それによると、横浜…

伏字

1923年の大正関東地震のときの芥川についてもう少し。 芥川と菊池寛とが話をしていて、いろいろな混乱は●●●●のせいだという話があると芥川が振ったところ、菊池は一言に『嘘だ』とはねつけたというのです。芥川は町内の自警団の一員としてかりだされていたの…

千載一遇

17日の、経済産業大臣の「大規模停電のおそれあり」という発言にふりまわされてしまったのですが(それでも、結果的に大停電にならなくてよかったのでしょうが)、大臣、ほかにやるべきことがあるのではないかとも思うのです。 被災地のかたがたが、ガソリン…

転機

1923年の関東地震のとき、志賀直哉は京都山科あたりに住んでいたと記憶しています。京都では少し揺れたらしいですね。 その後、彼はしばらく奈良に住むというように、関西を拠点にしていました。小林多喜二が奈良を訪れたというのも有名な話ですね。 谷崎潤…

震う

芥川の一件ですが、関東地震のあとの彼の文章を眺めてみると、『天譴』と言い出したのは渋沢栄一だったようです。幸田露伴にも、「震は亨る」という文章があって、やはり心がけの問題を語っていました(全集第30巻)。岩波版鴎外全集(1971年からの版)第1巻…

責務

とにかく、人災は避けなくてはなりません。みんな、おとなしく、『計画停電』とやらに従おうとしているのに、その総元締めの態度は何だともいいたくなります。報道によれば、今回のマグニチュード9.0というのは、観測史上最高というわけではなく、1950年代か…

この場所で

うちは、家族・親戚など、とりあえず無事でした。ありがたいことです。被災されたみなさんに、申し訳なく思います。 そのうえで、考えなければならないのは、「人災」をふせぐことだと思います。それは、当然、専門家の人たちの責任でもあるでしょうが、関東…

大津波

地震災害で、津波の映像が流されています。 ちょうどこの前、岩波新書の『津波災害』を読んだばかりなので、よけい、身にしみてきます。地震と津波はともかく、これ以上の「人災」が起きないことを祈ります。原発からの避難指示も出ているそうですし。

方向性

薮内清『中国の科学と日本』(朝日新聞社、1972年)です。 中国や日本の「科学」が、西洋のものとどう違うかについて、エッセイ風にまとめたものです。いろいろな論考だったのでしょうが、著者によると、けっこう書き直したので、論文集ではなく、まとまった…

眼の高さ

『すばる』4月号から、椎名誠さんの新連載がはじまりました。 お孫さんたちとの日常を題材にする作品のようですが、アメリカに住んでいた椎名さんの息子夫婦が、出産のために日本にやってくる。そこで、お孫さんたちとの日常がはじまるというのです。 今回は…

こんなことまで

大浦ふみ子さんの『歪められた同心円』(本の泉社)です。 表題は、長崎における『被爆者』の方々の中に、行政側による理不尽な区別があることを告発した文章からのものです。 いまの長崎市内でも、原爆投下当時長崎市ではなかった地域の中に、距離的には明…

文学の鬼

水上勉『宇野浩二伝』(中央公論社版水上勉全集第16巻、1977年)です。 昔は、『小説の神様=志賀直哉』『文学の神様=横光利一』みたいなニックネームがあったようで、宇野浩二は『文学の鬼』といわれていたようです。著者は戦後まもなく、出版社勤務の頃に…