2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

普通の親

大塚英志さんの『二階の住人とその時代』(星海社新書)です。 1980年代はじめ、徳間書店の2階の編集部に出入りしていた人たちが、どのようにして新しい文化を作りだそうとしていたのかを回想した記録です。もとはジブリの雑誌、『熱風』に連載したものをま…

めぐりあわせ

大岡昇平『わが美的洗脳』(講談社文芸文庫、2009年)です。 著者の音楽・美術・演劇・映画についてのエッセイを集めたものです。こうしてみると、この人はもともと中原中也や小林秀雄との関係が深かったのだということが、あらためてわかるような気がします…

バランス

原武史さんの『直訴と王権』(朝日新聞社、1996年)です。 18世紀からの朝鮮王朝を軸にして、当時の王権と民衆とのかかわりをさぐっています。王の力の強かった時期と、両班層の力の強かった時期との入れ替わりが、朝鮮王朝の歴史を左右したのだということに…

ピンポイント

小林信彦さんの『悪魔の下回り』(新潮文庫、1984年、親本は1981年)です。 死を決意した中年男が、悪魔と契約して変身能力を身につけ、若い歌手や編集者、作家をめざすなかで、その業界の暗部に接するという作品です。 面白く読めばそれでいいという作品で…

封印

『そこに僕らは居合わせた』(パウゼヴァング著、高田ゆみ子訳、みすず書房、2012年、原著は2004年)です。 1933年から45年の間のドイツがどんな社会であったのかを、当時少年少女たちだったひとを登場させて描いた作品集です。21世紀になって、学校で当時の…

一辺倒ではなく

『現代ドイツ短編集』(三修社、1980年)です。 DDRの作家たちのアンソロジーという、今となっては珍しいものです。もちろん、アンナ・ゼーガースやクリスタ・ヴォルフのような、よく知られたひともはいっているのですが、それ以外の人の作品にも、なかなか…