2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

いよいよ完結か

『図書』は岩波書店のPR誌ですから、岩波の新刊案内が一緒に綴じこまれています。そこには、今月の新刊と来月刊行の予告があります。 この予告欄は、けっこう重宝していて、ナサニエル・ウェストの『孤独な娘』が文庫で出るということで研究会のテキストに選…

端から中から

松本仁志さんの『筆順のはなし』(中公新書ラクレ、2012年)です。 1950年代に文部省が出した『筆順指導のてびき』にいたる筆順についての考え方を整理して、今後のありかたを考えます。それにしても、過去の筆順には、「川」を真ん中の縦画から書くものもあ…

今からみれば

中村静治『現代日本の技術と技術論』(青木書店、1975年)です。 著者の1970年代前半の論考をあつめたもので、石油ショックを契機にした、日本のエネルギー政策に関する文章が主になっています。むかし、学校では「エネルギー革命」とかいわれて、石炭から石…

長生き

伊藤信吉『高村光太郎』(角川文庫、1964年)です。 高村光太郎は、戦後もしばらく活動していたので、戦争責任追及となると、必ずと言っていいほどひきあいに出される人です。もちろんそれは、彼が岩手に戦後の一時期隠棲生活を送っていたことが関係するでし…

とにかく動く

木下武男さんの『若者の逆襲』(旬報社、2012年)です。 最新の労働運動への提言というところで、ジョブ型雇用を中心とするシステムへの改革をすすめようというのが著者の主張というところでしょう。 以前の本では、日本型の企業別組合の歴史の全否定的なと…

先は長い

〈コレクション戦争と文学〉(集英社)の別巻『〈戦争と文学〉案内』です。 評論家による時代別の概説と、アンソロジーに収録できなかった長編作品の紹介、それと、1893年から1989年までの戦争文学年表が収められています。 これだけの作品をまとめたという…

ひろいあげる

村上龍さんの『55歳からのハローライフ』(幻冬舎、2012年)です。 中高年をめぐる現実を、さまざまな側面から描いた作品で、熟年離婚やペットロス、早期退職した営業マンの再就職、中学時代の同級生がホームレスになるというような話が、連続してひとつの長…

市中ひきまわし

中西新太郎さんの『「問題」としての青少年』(大月書店、2012年)です。 青少年をめぐる環境を、「健全―逸脱」というわくぐみでとらえることは、本当の問題を見えなくさせるというのが、中西さんの意識の中心にすえられています。そうした形でとらえること…

残っていない

本の話ではなく、周辺のことですが。 高校時代から、実は買った本を帳簿につけています。M社のルーズリーフで、単語帳のかたちをしているのがあって、それだと1ページに見出しも含めて30冊(両面で60冊分)記入できるので、けっこう重宝して使っていました…

残っていた

ノーベル賞はアリス・マンローさんだそうです。 たしか、以前彼女の『イラクサ』(新潮クレスト・ブックス)をここでとりあげたことがあったと思います。短編で、いろいろな人生の側面を切り取るところに、すごみを感じたような記憶があります。 こういう人…

未決算

趙景達さんの『近代朝鮮と日本』(岩波新書、2012年)です。 19世紀から韓国併合までの歴史を書いているのですが、やはり、明治期の日本が、朝鮮や中国に対して抱いていた侮蔑的な感覚について、もう少し日本人は考えなければならないのではないかとも思うの…

きっかけ

鷲巣力さんの『「加藤周一」という生き方』(筑摩選書、2012年)と海老坂武さんの『加藤周一』(岩波新書)です。お二方とも、その人なりのアプローチをしていますが、どちらも、加藤の仕事の中で、『三題噺』から『羊の歌』にかかるあたりが重要な意味をも…

回復過程

『福永武彦新生日記』(新潮社、2012年)です。 1949年と、1951年から53年にかけての福永の日記が、はじめて翻刻されたということです。当時、福永は清瀬の療養所にいたわけで、そこでの生活や、退所後の職をどのように得るのかの心配事が、文学への探求のあ…