広がり

コレクション戦争と文学(集英社)のなかの、『帝国日本と朝鮮・樺太』です。
朝鮮にやってきた人たち、育った人たちの作品を、植民地時代に発表されたものも含めて、広くあつめています。樺太では、先住民族を登場させた作品もありますし、今月出たばかりの〈台湾・南方〉の巻とあわせると、大日本帝国が、多民族を抱えた複合的な植民地帝国であったことが見えてきます。中島敦の作品で、ソウルを舞台にした「巡査の居る風景」が収録されていますが、彼が南洋の教科書つくりの仕事をしていたことを考えると、帝国日本の広がりも実感できるということでしょうか。
そのへんをよく自覚しないと、〈祖父を尊敬する三代目〉で、〈国を守る誇り〉を強調し、そのために〈軍事力を整備しよう〉とする指導者が双方に、ということになるのでしょうか。似たものどうしということばも、絵空事とはいえません。