縛り

岡田宜紀さんの『司馬遷の妻』(民主文学館)です。
岡田さんは京都で長く教員をやっていたそうで、学校を舞台にした作品も多いようです。
けれども、この短編集で印象に残るのは、京都郊外の岩倉に残っていた乳きょうだいの風習にかかわった、「乳兄妹」でしょう。むかしの京都は、すこし市街地を離れると、洛中との差がはげしかったようです。その中で育ったひとたちの、ある意味では数奇な生涯を、作者は追求しています。サスペンス的な要素が、あまり生きていないような感じもありますが、家族ともいえるようでいいにくい微妙な関係の実際を、よく描いているようにみえます。そこをいやだと思う人も、いるのかもしれません。