2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

トップダウン

加藤陽子さんの『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)です。 加藤さんが、神奈川のある中高一貫校の、歴史研究のクラブの生徒に対して行った講義をまとめたものです。 加藤さんは、近代日本史を、政治家の動向を中心に押さえようとしていま…

こればっかり

このところ、訃報ばかりが目につきます。水野忠夫・庄野潤三・大江志乃夫というように。 ロシア文学の世界も、翻訳者が代替わりということを感じさせましたし、〈第三の新人〉の歴史的な立場ということも考えましたし、日本近代史研究も、様変わりということ…

口実

大江健三郎さんの『燃えあがる緑の木』(全3冊、新潮文庫、1998年、親本は1993年から1995年にかけて)です。 愛媛のいつもの大江さんの世界に、新しく〈教会〉ができて、それが崩れていく過程を描いた作品なのですが、その〈教会〉に、外部からの干渉がはい…

棄てたもの

娘の大学のある街に行ってきました。 古い都のあるまちで、その当時からある寺社が、いまも人々を集めています。 当時の都の跡地は、公園のような形になっていて、犬を連れて散歩する人や、キャッチボールをしてあそぶ子どもたちもいます。その一角で、間近…

筋をとおす

永井潔さんの『あの頃のこと今のこと』(日本美術会、2008年)です。 『美術運動』誌に1988年から1998年にかけて連載されたエッセイをまとめたものです。戦後の日本美術会創立のころの回想が中心なのですが、当時のさまざまな動きがしのばれます。 文学の世…

たいしたことではなくはない

鈴木宗男議員が、衆議院の常任委員会の委員長になることをめぐって、与野党の意見が分かれて、調整ができなかったという報道がありました。 そのときの映像をみていると、社民党の辻元代議士が、その場にいます。連立与党の国対関係でいるのだなと、そのとき…

洞察

『古在由重著作集 第6巻』のつづきです。 1944年の古在さんの日記が収録されているのですが、そこに書かれた生活のいろいろも興味深いのですが、古在さんは、日記の中に、当時の新聞記事を貼り付けているようなのです。多くはヨーロッパの情勢で、東部戦線で…

同音

『古在由重著作集 第6巻』(勁草書房、1967年)からです。 この巻は、1944年の日記がメインなのですが、戦時中や獄中でのメモなど、いわば雑纂的な巻ですが、そのなかに、戦時中の回想があります。ある知り合いにあった古在さん、 「最近は碁学ばかりやって…

入り口

栗栖継さんがなくなられたということを、ようやく知りました。 岩波文庫で、『兵士シュヴェイクの冒険』とか、『山椒魚戦争』とかを読んで、チェコ文学の世界を知ったことが、思い浮かびます。 徳永直と組んだ〈声明〉のこととか、いろいろと思うところもな…

長い目で

中高入試の過去問を出版することで有名な出版社が、著作権の問題で訴えられたそうです。(朝日新聞に記事がありました) 訴えた人たちは、ある著作権団体に加入しているひとたちで、そこは以前から、そうした副教材や問題集への二次利用に関しての著作者の権…

ちょっとの違い

内容の話でなくてもうしわけないのですが、講談社文芸文庫から、室生犀星の『哈爾濱詩集・大陸の琴』が出たのですが、著者表示が「むろお」になっているのです。アルファベットの表記も「muroo」なんですね。 あれっと、思って、角川文庫の詩集(1999年)と…

謙虚

報道によると、民主党は、衆議院の正副議長両方よこせと主張しているそうです。この前も書きましたが、小選挙区でも比例でも、5割の得票を得ていないのに、結果的に300議席をとっているわけですから、そこをどう考えるかでしょうか。 官僚主導を排しながら、…

パンデミック

娘が大学を受けたときに、いわゆる〈赤本〉と呼ばれる、入試の過去問集を買っていたのですが、その中に、小説の問題がありました。 これも、最近は著作権にうるさい人があらわれて、ある年など、センター試験の問題文が白紙になったこともあったのですが、そ…

線を引く

田中克彦さんの『ノモンハン戦争』(岩波新書)です。 ソ連崩壊以来、いろいろな史料や研究が出てきて、モンゴル・ソ連側の情報と、日本側の情報とをつきあわせることができるようになったという状況のもとで書かれたものです。戦闘の経過よりも、そこにいた…

担い手

新船海三郎さんの、『鞍馬天狗はどこへ行く』(新日本出版社)です。 幕末維新を扱った、いくつかの小説を紹介しながら、当時の社会をどう考えたらよいのかという問いかけの本です。 扱われた作品をみると、幕末維新の動乱の時代を、〈勝者〉の目でとらえた…

事実は事実

武田知弘さんの『ヒトラーの経済政策』(祥伝社新書)です。 NSDAP時代のドイツの、なるべく『光』の面を取り上げようというところにねらいがあるようです。たしかに、当時のドイツが、ある意味開発独裁的なところもあるので、そういう側面からのアプローチ…