2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

裏を返せば

近鉄飛鳥駅のところに、レンタサイクルの店があります。店によっては橿原神宮前駅の営業所に〈乗り捨て〉もできます。 飛鳥のあたりには、自転車に乗っている人もみかけるのですが、飛鳥寺から北に向かい、雷丘のふもとから天香具山をめざすと、観光の人はほ…

不在

『坂の上の雲』のドラマ、9回まで終わりました。 結局、第2部には漱石は出てきません。子規亡き後、戦争を相対化してみる人はでてこないのでしょうか。 第1部では、松山に帰省した真之と、当時松山に赴任していた漱石とが出会う場面があります。たしか、原作…

汚れた握手

川崎浹『ソ連の地下文学』(朝日選書、1976年)です。 ソビエト政権時代の言論への抑圧とそれに抗する地下出版の流れを記述したものですが、1960年代半ばが、一つの転機になっているように見えます。1964年には、ソルジェニーツィンの『イワン・デニーソヴィ…

脚色

水上勉の『古河力作の生涯』には、同時代のことを記すのに、年表を引用します。そこには、当然日露開戦前夜に、当時の有名な新聞であった『万朝報』が開戦論に転じたため、堺利彦・幸徳秋水・内村鑑三が退社し、堺と幸徳とは平民社を興したことが記されます…

地面の上で

水上勉『古河力作の生涯』(平凡社、1973年)です。 若狭出身で、大逆事件に連座して死刑に処せられた古河の生涯を、同郷の著者が追いかけたものです。今年が100年ということでもなかったら、ひょっとしたら手にしなかったかもしれませんが、平易な文章は、…

お説教

山下文男さんの『昭和の欠食児童』(本の泉社)です。 1930年代の東北地方の凶作と、それに対する報道のありかたについて検証しています。山形県の〈娘身売り〉写真に関しての誤解を正したり、東北本線の列車食堂車から〈残飯〉をもらう子どもたちの記事につ…

広くとる

来年、集英社が『戦争×文学』というアンソロジーを発刊するそうです。カタログによると、四六判、各巻640-840ページ、1段組で、全20巻、別巻1という構成になるようです。 短編中心になるのでしょうが、明治期から現代までの作品を収めるようです。6月の第1回…

この際だから

山田朗さんの『これだけは知っておきたい日露戦争の真実』(高文研)です。 この時期に出たことでもわかるように、『坂の上の雲』に描かれる日露戦争のありようを、軍事的な面での日本軍の成功と失敗という面からとらえています。 実際、日本人の歴史的な知…

非実在

東京都のマンガなどを規制する条例が可決の方向だということです。 以前の条例は、〈非実在青少年〉が規制対象だったのですが、今度は年齢制限が取り払われました。すると、法律で禁止されている性関係を描くと規制にひっかかる危険性がうまれます。 となる…

目をつける

青木文庫の社会思想シリーズ『森近運平・堺利彦集』(1955年)です。 二人の〈共著〉として刊行された(主執筆者は森近だそうです)『社会主義綱要』(1907年)を中心に、ほかの論考を収録しています。森近の社会主義理論への理解度はすぐれていて、ことばづ…

考えすぎ

『群像』1月号の、磯崎憲一郎の作品は、戦後日本の暗喩なのでしょうか。橋本治のような、きちんと歴史事実をふまえたものとはちがって、戦後の流れの中に、労働の変容を取り上げようとしたのでしょうが、なんだか中途半端で、これはどうかなと思いながら読ん…

にぎやか

オンデマンドで観た『坂の上の雲』第6回(地上波放送12月5日)です。 ロシアでの広瀬武夫の活躍がメインで、ドラマとしての演出でしょうが、帰国に当たっての歓送音楽会で『荒城の月』を演奏させるなど、いろいろと盛りだくさんという感覚はありました。真之…

ぐるっとまわって

『片山潜・田添鉄二集』(青木文庫、1955年)です。 当時青木文庫では、〈資料日本社会運動思想史〉というシリーズを企画していて、その中の1冊なのです。片山の『我社会主義』(1903年)、田添の『経済進化論』(1904年)『近世社会主義史』(1908年)の3つ…

終わりはない

山形暁子さんの『女たちの曠野』(新日本出版社)です。 1940年生まれで高校卒業して銀行に就職した女性の自己形成史と、1997年からの、銀行でのコース別人事が結果的に女性差別になっていることに対してたたかう女性たちの群像とを、交互に組み合わせた構成…

視線

佐多稲子『子供の眼』(角川小説新書、1955年)です。 この時代は新書版の小説が流行していて、角川だけでなく、岩波新書にも小説が収録されたり、河出書房も新書を出したりしていて、徳永直の『静かなる山々』も角川から出ています。 内容は、「子供の眼」…