天網恢恢

中国ものが続きますが、大木康さんの『明清文学の人びと』(創文社、中国学芸叢書)です。
大木さんは、高校の先輩に当たる方で、向こうは覚えていないでしょうが、たしかいつぞや学園祭のときに、漢詩を作っているのを拝見したのが、大木さんでなかったかと思っています。
ところで、この本は、明清時代の白話小説に出てくる、さまざまな階層の人たちを、作品ではなく階層で分けて記述しています。それだけ当時の白話小説の題材の広がりがあるわけですが、こうしてみると、中国の社会の奥の深さというものも感じてしまいます。
前にも書いたかもしれませんが、文言小説が志怪の方面に重きをおいているのに対して、白話のほうは、どちらかといえば、現実社会のなかで、しっかりと生きていく人たちを描くことが多いように思えます。そこには、いろいろな苦難はあっても、最後には「正しい」ものが報われるというものになっているように見えます。
この本にも、農民や職人などの世界が書かれていて、そうした民衆のひとりひとりの生活を、しっかりと描いている作品が存在したことをうかがわせています。
中国が、長い戦争に耐え抜いて、半植民地支配から脱却できたのも、そうした民衆の力あってこそなのでしょう。そうしたことも考えさせられます。