多面的に

纐纈厚さんの『日本海軍の終戦工作』(中公新書、1996年)です。
海軍内部の史料を使って、海軍首脳の考え方をさぐっていて、決して海軍が平和勢力とはいえなかったことを明らかにしています。
実際、この間いろいろと読んでいると、たとえば小田実さんの『河』には、上海や武漢での、長江に浮かぶ列強諸国の軍艦が登場しますし、日中戦争を拡大したのも、海軍航空隊の「渡洋爆撃」であったりしたように、中国へのかかわりもあったわけですし、いろいろと知っておかなければならないこことも多いのでしょう。日米開戦当時、両国の太平洋地域における正規空母の数は同じだったというところまで、日本は対米戦の準備をしていたわけですから。
それにしても、この本でも、戦争終結のためには「国体護持」の保障が必要だったというのですから、何のための戦争だったのでしょうね。