翻案

今年のセンター試験の古文の問題文は、江戸時代の作品で、浅井了意の「狗張子」という作品から出題されました。旅商人がある家に一夜の宿を借りたのですが、そこの家は夫の帰りを待つ妻がひとりで住んでいたのでした。
実は、その女性は既に死んでいて、幽霊だったという流れになるのですが、この作品、中国の伝奇作品の翻案だったのです。中国古典文学大系の『六朝・唐・宋小説選』(前野直彬編訳、平凡社、1968年)の中に、「続玄怪録」という作品が収録されています。9世紀の李復言という人の著作だそうですが、その中の一つの話を、浅井了意が舞台を日本にして書き直したのです。
江戸時代の創作の中には、中国小説を下敷きにしたものが多いとは聞いていましたが、こうした形でわかるというのも、おもしろいものです。

なお、芥川龍之介の「杜子春」のもとになった話も、この「続玄怪録」のなかにありますし、結婚の相手には赤い糸が結んであるという話も、ここにあります。